「まとい工房 南天」(秋田市川尻みよし町)の創業10周年記念展が11月21日から、アトリオン美術展示ホール(秋田市中通2)で開かれる。
江戸時代の町火消しが用いた長さ約2.3メートルの旗印「まとい」。長さ3.5~14センチほどのミニチュアまといを専門に作る元消防士の渡部顕(あきら)さんが、工房の立ち上げ10周年を記念し、初めて個展を企画した。
京都の祇園祭の山鉾(やまほこ)からアイデアを得て、8カ月ほどかけて完成させたという松と金びょうぶで飾るまとい作品などに加え、「東京駅」「オーケストラ」のペーパークラフトなどを含む約80点の作品を出展。同展向けに制作した記念作品(3,000円前後~)などの販売も予定する。
前職の秋田市消防本部の職員時代から、まといのミニチュア模型を趣味で作る渡部さん。退職後、妻の勧めもあり、ミニチュアまとい専門の工房を立ち上げ、定番作品のほか、作品のオーダー(8,000円~6万円前後)も受け付ける。
「防火」の象徴であることのほか、まといの飾り「末広がりの馬簾(ばれん)」「先を照らすちょうちん」「登り調子のはしご」「困難を断つ鳶口(とびぐち)」など、縁起物であることから贈り物としての需要を生み出した。工房経営は順風満帆といえない時期もあったが、精密で繊細な作りの作品でファンを増やし、リピーターや著名人の顧客もできた。消防庁長官に記念品として贈られたこともあるという。
渡部さんは「繰り返し注文してくれるお客さまに支えられた。工房の立ち上げから作品のPRに至るまでを支えてくれたのは妻」と10年を振り返る。「孫に『まとい』の名を付けてくれた長女には驚かされた」とも。「これからも感謝の気持ちを忘れず、『日々平々凡々』に作り続けたい。作品を身近に見てもらえれば」と来場を呼びかける。
開催時間は10時~17時(最終日は16時まで)。入場無料。11月24日まで。