秋田公立美術大学(秋田市新屋大川町)の一般向け講座「旅する地域考 alternative」が9月19日、オンラインで始まった。
公募で集まった受講者が、同大学教員や国内外で活躍する美術家などのゲスト講師と共に秋田県内の特定エリアを「旅先」として回り、地域調査や住民交流、共同生活などの体験を得ながら表現活動に生かす合宿型講座。文化庁の「大学における文化芸術推進事業」の一環として、2018(平成30)年から夏期と冬期に分けて開講し、これまでに延べ47人が受講した。
3年目を数える今年は、新型コロナウイルスの影響から合宿形式の開講を断念する一方、受講者が暮らす地域を「旅先」に見立て、各界で活躍するゲスト講師を招いたオンライン講座を開いたり、ラジオ付きカセットレコーダーや使い捨てカメラなどの道具類のほか、ジュンサイやモモ、日本酒など秋田の特産品を詰め合わせた「タビコウキット」を受講者に配布してワークショップを行ったりする、本格的なリモート講座として企画した。
今年のテーマは「転調する地域」。同大学に通う学生や県内外の社会人ら11人が参加した開講初日。同事業を統括する同大学大学院教授でアーティストの岩井成昭さんと同教授で建築家の岸健太さんが、オンライン会議システムでつながる受講者に対し、「地域」を素材に「旅」を手法とする講座のコンセプトや事業の意義を紹介。受講者は、早速出された課題に取り組み、自己紹介を兼ねてオンラインで発表し合った。
続いて行われた講座のゲスト講師は、料理家で小説家の樋口直哉さん。「食と地域」をテーマに、カツオ節の製造工程や養鶏業などについて自身の取材を基に紹介したり、世界に広まった料理の歴史的な成り立ちなどについて地域性を絡めながら解説したりすることを通じて、観察やリサーチ、ものづくりの視点を受講生に提示した。
受講者は、10月までの土曜と日曜、計10回開講予定のオンライン講義の受講と、それぞれの居住地でフィールドワークなどの課題に取り組む。