乗客に「四つ葉のクローバー」を渡すことで知られる秋田市のタクシードライバー・今井泉さんのエピソード集「幸せを運ぶタクシー」が4月9日、ダイヤモンド社(東京都渋谷区)から出版される。
「幸せのおすそ分けをしたい」と話すタクシードライバーの今井さん
「それぞれの人生に配られた1万本の四つ葉のクローバー」が副題の同書は、今井さんがこれまで1万人以上の乗客に「四つ葉」を渡したエピソードや、2003年にそれまで勤めていた会社を突然リストラで解雇された後、「何もしないで悩むぐらいなら、ダメモトでやってみよう」と56歳で初めてタクシー運転手に転身したときの心持ちなどをつづった。
ドライバーになって間もない2004年、「お客様のプライバシーにかかわることなので、普段は立ち入ったことを聞くことはない」(今井さん)が、乗車した女性があまりに沈んだ表情だったことから理由を尋ねたところ、女性は「彼氏にふられた」旨を話した。今井さんは、乗客待ち中にタクシー乗り場の側にあった花壇で初めて見つけた「四つ葉」を手帳に挟んでおいたことを思い出し、「元気を出して」と言って渡したところ、女性に泣きながら感謝されたことから、「これほどまでに感謝されたことがうれしくて」(同)、休日に「四つ葉探し」をしては乗客に渡すようになった。
こうした今井さんの活動を初めて報じた2007年11月7日配信の秋田経済新聞の記事がヤフートピックスに掲載されたことがきっかけとなり、全国紙・地方紙の取材やテレビ番組への出演依頼が殺到。昨年には、中央省庁の公務員がタクシー運転手から缶ビールなどを提供されていることが問題になった「居酒屋タクシー」に関する国会質疑中で、「四つ葉を配るタクシー」として引き合いに出されるなどの反響もあった。
今井さんは「出版化の申し出を受けたときは、本当に私のことなどが読み物になるだろうかと思った(笑)」が、「私が乗客の皆さんから受けた1万枚分の幸せを読者の皆さんにおすそ分けできればうれしい」と出版化を決めた。「私も会社を解雇されたときは悩んだが、何もしないで外の環境に左右されるより、まずは自分が行動して、自分の気持ちを盛り上げていくことが大切」(同)とも。
四六判並製、96ページ。1,260円(予価)。