8月に閉店した居酒屋店主とのトークイベント「律子さんを囲む会」が11月16日、秋田市文化創造館(秋田市千秋明徳町)で開かれ、20人以上の市民が元店主との交流を楽しんだ。
1995(平成7)年4月、保険代理業などを営んでいた長尾律子さんが、秋田市大町に開業した居酒屋「お食事処 律子」。店主の気さくな人柄を慕う常連客も多かったが、店舗の賃借契約終了に伴い、8月31日、28年の営業に幕を下ろした。
長尾さんを慕う常連客や市民から、閉店を惜しむ声が多く寄せられていたことなどから、秋田経済新聞が企画したトークイベント当日。同店に掲げられていた看板「味でうわさの秋田一」は、居抜きで借りた店舗に掲げられていた看板をそのまま引き継いだものだったことや、看板から名付けた「秋田一のホルモン煮込み」が文字通りの看板メニューになったこと、店内で調理するインスタントラーメンが隠れた人気メニューだったこと、かつて、同店の並びに女性の名前を付けた小料理店など4店が連なって営業していたことなど、長尾さんは、28年間の営業を振り返った。
対談相手を務めた、酒場巡りが趣味で同店の常連客だった秋田市議会議員の若松尚利さんは「全国の酒場を案内するガイド本に同店が紹介されたが、出版されたのは同店の閉店後だったこと」など、会場の笑いを誘いながら紹介。まちづくりイベントを通じて長尾さんと交流の深かった、15年来の常連客で秋田県議会議員の武内伸文さんは「さまざまな背景を持つ市民が集うことのできる同店のような飲食店が、たくさん生まれるようなまちづくりが大切」と持論を展開。来場した市民を巻き込みながら、町の移り変わりや人とのつながりの大切さなどの話に花を咲かせた。
川反(かわばた)の飲食店に会場を移して開かれた懇親会で長尾さんは、「多くのお客さまのおかげで営業を続けることができた。このような場を設けてくれたことに感激している」とあいさつ。「閉店したことに驚いた。残念に思っていたところ、律子さんと飲むことができてうれしい」と市内在住の男性。長尾さんは、特別に作った「秋田一のホルモン煮込み」を振る舞うなどして、常連客らとの交流を楽しんだ。