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すきかちっ Vol.2/「秋田のBBQ」総合プロデューサー・伊藤智博さん #04

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記事提供:すきかちっ

秋田市最高!

※以下、伊藤=伊藤智博さん

Matirog「前回、秋田県が抱える問題の一つとして『秋田県民の危機感の欠落』についてお話ししましたが、この問題をどのように解決していくのかは、全国からも注目されていますよね。ここで打開策を生み出し、秋田県が一つのモデルとなれば、同じような状況にある他県にとっても試金石になります。五城目町の地域おこし協力隊として、3年間の任期を勤めあげた後、そのまま五城目町に住んで、秋田県に貢献している柳澤龍さんという方がいらっしゃいます。僕はまだお会いしたことはないのですが、ブログなどで活動を拝見していると、かなりの天才プレイヤーだと感じます。伊藤さんは柳澤さんにお会いされたことはありますか?」

伊藤「はい。何度も会っていますし、バーベキュー(以下、BBQ)もご一緒しましたよ。着飾ることなく、とても朗らかな方ですね。秋田県中央エリアの地域おこし協力隊でファシリテーターをしていただいた際にはこんな事を言ってくれました。『10年後の秋田について、最高な未来と最低な未来を想像してみよう、その範囲のどこかに秋田はいます。その秋田について考えてみましょう』と。そう言われたとき、『悪い事ばかりではない、いち早く超高齢化社会から脱却するのも秋田なのだ。その先まで今から考えるべきなのだな』ということに気付かされました。いろいろな切り口で話を展開してくださってとても刺激になりますし、柳澤さんとはこれからも一緒に活動させていただきたいと思っています」

Matirog「やはりやり手なんですね!五城目町は僕の両親の出身地なので、僕の『魂のルーツ』でもあります。柳澤さんが居てくださって本当に嬉しいし、頼もしいです」

伊藤「そうなんですね!僕の父親も五城目町出身です!」

Matirog「五城目町にはバイタリティーあふれる切り込み隊長が多い印象があります。あと今や有名な音楽フェスの一つになった『男鹿ナマハゲロックフェスティバル』の開催地である男鹿市も同じ印象ですね。地名の通り男気があふれてるというか」

伊藤「一方で秋田市は、何でもあるけれど、何ができるのかが見つけにくいんですよね。秋田市の魅力ってなんでしょうか」

Matirog「僕も、県外の友人が遊びに来てくれた時などは、いつも悩むんです(苦笑)。みちのくの小京都と称される角館町、クニマスの里と呼ばれ日本一深い湖である田沢湖(仙北市)、大湯(鹿角市)のストーンサークル、なまはげに会える真山伝承館(男鹿市 )…。秋田県内には魅力的な観光地がいっぱいあるんですが、秋田市には取り立てて名所がないんですよね」

伊藤「他の市町村を考慮すると、秋田市を売り出すときに県名でもある秋田を使って『秋田最高!』とは言いにくいです。しかし『秋田市最高!』と言うには、秋田市にはあまり特徴がないというか」

Matirog「北前船があった時代、流通のルートが日本海側にあり、寄港地が今の秋田市にあったため、さまざまな文化や人との交流もありにぎわっていたと聞きます。現在の土崎港のあたりが本来の雄物川の河口で、貿易が盛んだった土崎では、豪邸もたくさん建っていたと聞きます。歴史や文化もあるんですから、もっとアピールしていきたいですよね」

秋田ラテン化計画

Matirog「100年後の秋田県が明るい未来であるために、今必要なことは危機感を持つことだと前回お話してくれました。伊藤さんにはいろいろなビジョンがあるようですが、具体的にはどのようなことをお考えですか?」

伊藤「秋田ラテン化計画です!」

Matirog「ラテン化計画ですか!?そのビジョンにいたったきっかけはなんでしょうか」

伊藤「秋田県民は明るさに欠けるように感じます。もっとラテンのような明るいノリが必要ですね。僕が開催している『縁結BBQ』でもそうですが、秋田県民はテンションを上げるにはお酒というガソリンが必要なんですよね。給油してエンジンかけて、そこからジワジワとギアを上げるように盛り上がってくるんです。会話が弾むまでとても時間がかかります。何度も開催していますが、毎回同じ印象ですね」

Matirog「僕も似た経験があります。2011年から2015年の5年間、秋田県内の日本酒を楽しもうという目的で開催された『酒縁(しゅえん )』というイベントに関わっていたのですが、お酒が入るまでみなさん静かなんですよね。毎年参加して下さっている常連さんですら、イベント開始直後はいつも控えめでした」

伊藤「恥ずかしがり屋な県民性なんでしょうね。みんなで同じことをしていこうという農耕民族ならではの特徴なのかな?目立つことを極端に嫌がりますよ。目立つことが怖いのだと思います。控えめな秋田県民にお伝えしたいのは、失敗したって良いと思うべしということです。リスクばかりに目を向けていては何も始まりません。これは僕自身、新規事業を始めるときに心がけていることでもあります」

Matirog「あくまでも僕個人の体感ですが、前例がないことをすることは良くないことという風潮が秋田にはどこかありますよね。下剋上の戦国時代を終え、長い江戸時代の間に右へならえが定着したのかもしれませんが、いろいろな時代の流れがあって、今は変換点です。ラテン化計画を始めるなら今ですよ!」

伊藤「僕のBBQ事業では、みなさんの反応もよく、応援して下さる人も多いです。控えめながらも、変革を求めている人は秋田にはたくさんいるように感じます。そのためにも、上に立つ人間が、新しい計画に関して、これはダメだと言わないことがポイントだと思います。そして、新しい計画の提案をしやすい環境づくりが大切です。商工会からの起業家支援の窓口も豊富ですよ。移住者向けだけではなく、新規事業を立ち上げたい方に対しても、県や市からの助成金や補助金制度がたくさんあります」

Matirog「どこに相談したらいいんですか?」

伊藤「県などの都市開発窓口に行くと、とても丁寧に教えてくれます。補助金に関しては年に数回分かれている場合もありますが、タイミングが合えばすぐに補助金が受けられることもあります」

Matirog「ビジネスの立ち上げの時に、補助金があると助かりますよね。使わない手はないです!」

伊藤「県や市もお金を使ってもらうためにその制度を設けていますから、どんどん使っていいんです。この制度の存在がもっと周知されるといいのですが…」

Matirog「補助金制度が豊富にあるのであれば、利用者は今後増えていくはずですよね。そしてその利用者の中で競争が生まれれば、自ずと地域も盛り上がっていくように思います」

BBQ場のみならず、なべっこ場も作りたい

Matirog「新たな事業として展開していきたいことはなんですか?」

伊藤「秋田駅前にBBQ場を作りたいです。秋田産の肉や野菜を使って、みんなで外でわいわい楽しむ場を提供したいです。これもラテン化計画の第一歩ですね」

Matirog「ぜひ作ってほしいです!クラフトビールやソーセージ、日本酒などのイベントはいくつかありますが、伊藤さんプロデュースの、おもてなしを大切にするBBQイベントはとてもユニークですから。僕も伊藤さんのイベントに参加させていただきましたが、初対面であっても、わずかな時間で打ち解けあえるBBQイベントは今まで経験したことがありませんでした。ビアガーデンや焼肉パーティーとは全く違う感覚です。究極の『なべっこ』だと感じました」

伊藤「秋田県の文化『なべっこ』は、山形県で例えると『芋煮会』のようなイメージでしょうか。芋煮会は、里芋や牛肉などの決まった食材を煮込んで食べる行事ですが、『なべっこ』は何を入れてもいいんですよね。僕が子どものころは焼きそばだったり、きりたんぽだったり、カレーだったり。中にはクレープを作る人もいましたね(笑)。要するにみんなで持ち寄って、みんなで一緒に食べるのが『なべっこ』なんです。みんなで一つの空間を作るので、BBQと似ています」

Matirog「懐かしいですね。小学生のころ『なべっこ』で、キノコや豆腐を学校に持って行った記憶があります!」

伊藤「楽しい思い出ですよね。残念ながら今は学校で『なべっこ』行事をしているところは少ないようです。『なべっこ』をぜひ全県で復活させたいので、BBQ会場を作るのと同時に、県営や市営のなべっこ場も作りたいですね」

Matirog「なべっこ場なら助成金も出るかもしれませんね」

伊藤「開催期間が限られるイベントではなく、いつでも誰でも楽しめるBBQ施設を作りたいです。まずは秋田駅前周辺から始めて、秋田県全域に広まるといいなと思っています」

主催者も参加者も『Win-Win』です

Matirog「伊藤さんは、ケータリングサービス『BBQ Plus+』代表、JBBQA公認上級インストラクター、『秋田なまはげBBQ協会』会長、『秋田市地域おこし協力隊』など、たくさんの肩書がありますが、それぞれ使い分けているんですか?」

伊藤「使い分けるというよりは、それぞれが連携している感じですね。秋田なまはげBBQ協会は、純粋にBBQの楽しさを広めるためのスマートBBQを推進しています。スマートBBQを広めることで、BBQインストラクターの資格を取る方も増えてきましたので、スキルを身につけた資格取得者には、BBQを楽しみながらも収入を得られるように、僕が代表を務めているケータリングサービスのインストラクターとして、サポートしてもらっています。地元の野菜、肉、酒を積極的に使いますので、農家さんや小売店の方の収入にもつながっているんです」

Matirog「BBQインストラクター、BBQを食べるお客さん、そして食材を提供する方々すべてが『Win-Win』な仕組みとなっていますね。BBQに関わる全ての人の意識をもプロデュースしている伊藤さんは、まさに秋田のBBQ総合プロデューサーですね!これからはモノよりコトを生み出す時代です。体験をどのようにプロデュースしていくか、そしてユーザー同士が体験を共有し、そこから更に未経験のユーザーに広めていくかが重要だと僕は思います。伊藤さんプロデュースのBBQの時間を共有したいファンは、今後どんどん増えていくと確信しています!さて『すき』を『価値』に変えている伊藤さんですが、ご自身の一番の強みはなんだと思いますか?」

伊藤「BBQを通して人と人とをつなげることはもちろんですが、なによりも秋田県の農産物、水産物、酒などを使って、秋田県でしか実現できないBBQを提供することに自信があります。このスタイルを全国に知らしめたいですね。そのために、全県で色々活動していますので、近いうちに間違いなく秋田県はBBQ県になります!」

Matirog「興奮してきました!BBQ発祥の地はアメリカですが、伊藤さんがプロデュースするBBQがアメリカに逆輸入されたら素晴らしいですよね。アメリカで秋田県のBBQのすごさが認められたら、関係人口の増加も期待できそうですよね」

伊藤「秋田県産の食材を使って作ったBBQは間違いなく絶品ですから。そういった強みは秋田県にはあります。日本でBBQと言えば秋田県というイメージを浸透させたいです。温泉県といえば大分県、うどん県といえば香川県ですよね?僕は「BBQ県といえば秋田県」を目指したいですね」

秋田おこし発動します

伊藤「秋田おこしは『冬おこし』だと思っています。地域おこし協力隊として帰秋し、26年ぶりに秋田で冬を過ごして2つのことを感じました。一つ目は冬の秋田の道を歩く人たちを見ると、ダークな色あいの上着を着ている方が多いということ。暗めの上着を着て雪の中を歩くと、まさに白と黒。ここに、黒以外の、汚れてもいいや、みたいなラテン系の明るい色の服を着る人が増えたら、冬の秋田が少し変わると思いました。秋田と同じか、それ以上に寒い国のフィンランドやノルウェーなどではみんなカラフルなダウンジャケットなどを着ています。そしてみんな楽しげにしているように見えます。それだけでも冬の雰囲気は明るくなると思うんです。二つ目は、秋田市に関して言えば12月から翌3月にかけて冬のイベントがほとんどないということです」

Matirog「秋田県の県南に位置する横手市には『かまくら祭り』、湯沢市には『犬っこ祭り』が、県北の大館市には『アメッコ市』などがありますが、確かに秋田市にはありませんね」

伊藤「そうですよね。この時期はみんな家に閉じこもってしまっているので、外遊びを楽しむために雪合戦を提案しようと進めています。スポーツとしての雪合戦の普及、発展を進める『日本雪合戦連盟』という連盟があります。登録チームは雪の降る地域だけにとどまらず、東京都や大阪府、広島県などにもあり現在全国で40チームほどあります。しかし、雪国秋田県にはチームも支部もありません。今年の3月に長野県白馬村で『第5回日本雪合戦選手権大会』が開催され、視察に行ってきたのですがそこで日本雪合戦連盟の会長とお話させていただける機会を得ました。会長に『秋田県にも地方支部を作りたい』と申し出たところ、『ぜひ!』と言っていただけました。秋田県民の地域愛を深めるためにも、冬のイベントとしてこの雪合戦を開催しようと計画しています。秋田市は中央、東部、西部、南部、北部、河辺、雄和の7つのエリアに分かれているので、各地域のサービスセンターでそれぞれ雪合戦チームを作るところから始めます。そして秋田市の代表チームを決め、その代表が全国大会へ進みます。まずは秋田市の中でチームを結成することで、チームメンバーと、応援する秋田市民が一体となり、そのプロセスを経て地元に対する愛が芽生えると思うんですよね」

Matirog「面白そうじゃないですか!勝敗はどのように決まるんですか?」

伊藤「人数は7対7で、前衛と後衛に分かれて、雪玉が当たったら下がります。試合時間は3分3セットで構成され、3セットのうち2セット先取したチームが勝ち、または一発逆転で相手チームのチームフラッグを取ったら勝ちとなります。長野県白馬村で開催された大会を見ましたが、選手のテクニックも必要で、かなりの盛り上がりだったんですよ。家に閉じこもりがちな秋田市の冬にはもってこいだと心底思いました」

Matirog「町を南軍と北軍の二つに分けて長い竹で叩き合う『六郷の竹打ち祭り』(美郷町)や、火を着けた炭俵に紐を付け自分の体の周りで振り回す『火振りかまくら』(角館町)がありますから、体力のある腕っぷしの強い人は秋田にもたくさんいますよね」

伊藤「秋田市から始めて、秋田県大会まで広がれば、冬の間はこれだけでも盛り上がると思います」

Matirog「そこで、BBQも開催したら最高に楽しい冬のイベントになりますね」

伊藤「そうなんです。冬のイベントを充実させたいんです。雪合戦開催はコストも抑えられるので、行政の負担も軽いはずです」

Matirog「雪はタダで用意できる上に、大事な資源にもなるんですね!価値を生む資源がこんなに身近なところにあったとは驚きです」

伊藤「雪を邪魔だとか不要だとかと思うのではなく、どう使うかで、秋田は元気になると信じています。そして、冬の田んぼもそうですね。冬の田んぼに、スノーモービルコースを作ったら面白いですよね」

Matirog「スノーモービル!乗ったことあるんですか?」

伊藤「はい、ありますよ。講習にかかる時間や費用はそれぞれ違いはありますが、スノーモービルは講習を受けて保険に入れば、免許がなくても乗れるんですよ。田んぼでの開催が難しければ、ゴルフ場でもいいですよね。冬場使っていないところに価値を見出すことがポイントです。秋田県内にスノーモービルを所有している人が10人以上いると聞きます。その方たちの協力を得て、スノーモービルに引っ張ってもらってデコボコの雪の上を駆け抜けるスノーラフティングをやっても楽しそうですよね」

Matirog「『増加する空き家をどうするか?』という使われていない建物にフォーカスした話題も多くありますが、使われていない空きスペースを有効活用するという意味で、『空き田んぼ』や『空きゴルフ場』でもいいんですね。使われていない時にどう活用するかに着目すれば、いろいろアイディアは出てきますね!」

伊藤「ゴルフ場関係でお知り合いはいませんか?(笑)」

Matirog「何人かいますよ!」

伊藤「いいですね~!ゴルフ場は、お風呂や食堂、駐車場も完備されていますから、使われていない時期に別の目的で利用するには最適ですよ。スノーラフティングができれば、冬場に子ども達も外で遊ぶチャンスが増えますからね」

Matirog「『すき』を『価値』に変えるヒントで一番大事なことは、『希少性』という言葉に集約できるんですよね。その人の好きや得意分野は必要条件ではありますが、加えて、その人にしかできないことに意味がある。その全てを兼ね備えているのが伊藤さんです。今回お話してくださった素晴らしい発想は、伊藤さんにしかできないことだと感じます」

伊藤「5年間温めてきたアイデアですので、必ず実現させますよ」

Matirog「これからも、秋田県民のみならず世界中の人に向けて、最高のコミュニケーションツールとしてのBBQ総合プロデュースを期待しています!秋田の未来をよろにく(肉)お願いします!素晴らしいお話をありがとうございました!」

★次回からは、渡部絢也さん&いせきあいさんが登場します。「あなたの『好き』を価値に変えるヒントvol.3-#1」は、5月14日配信予定です!お楽しみに!

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