秋田公立美術大学(秋田市新屋大川町)で1月14日、「アートの自立」などが題材のシンポジウムが開かれ、約60人の美術関係者や市民がゲスト講師の講義に熱心に耳を傾けた。
同大学の岩井成昭教授のグループが取り組むアートプロジェクトの一環としてシリーズで開くシンポジウム。
初めての開催となる当日、大手シンクタンクで芸術文化事業の研究などに携わる太下義之さん、「宿泊型アートスペース」の運営などで注目を集める京都市在住の美術家・矢津吉隆さん、秋田市内で地域型アートプロジェクトに取り組んできた医師でアートコレクターの穂積恒さんの3人をゲストに迎え、「地域特性に対応する文化事業の評価基準~アートの自立」と題して開いた。同大学准教授の小杉栄次郎さんが進行を務めた。
太下さんは、東京オリンピックの開催へ向けた文化庁と観光庁の連携により、今後4年間で芸術関連「文化プログラム」の全国的な展開が予定されていることなどを解説。穂積さんは、美術館と医療・介護施設の連携によるアートプロジェクトや、世界的な現代美術家・草間彌生さんの作品コレクションを使った美術事業などを事例に挙げながら、美術と地域との関わり方を紹介した。
芸術文化事業における評価が来場者数などの物量的基準によることが多い現状について、太下さんは、「入館者数を増やしたいだけならアニメキャラ展を開けばいい。入館者数は美術館における目標にはなりえない」と力説。矢津さんは美術家の立場から、「鑑賞者が自身の体験を他人へ伝える行動」の評価基準としての可能性や、職業としての美術家やアートマネジャーについて、「作品の販売だけではなく、『体験』の提供から対価を得ることなど美術には未開拓の分野がある」ことなどを提案した。
次回は1月21日、「文化事業の評価基準の現在」と題し、東京芸術大学の熊倉純子教授らをゲストに招いて開催予定。開催時間は18時~20時。入場無料。