(一社)海と日本プロジェクトin秋田県は7月24日(水)と25日(木)の2日間で小学生を対象とした体験学習イベント「鳥海山が産み出す海産物!あきたアワビ調査隊」を開催いたしました。鳥海山から流れてくる伏流水が豊富なミネラルと栄養を蓄え海に流れつき、アワビや岩ガキなどの海産物に大きな恩恵を与え地域の生活を支えていることや、アワビの漁獲量をどうすれば回復出来るかなどを、実際に足を運んで体験を通して学びました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
・開催概要:鳥海山から流れてくる伏流水が豊富なミネラルと栄養を蓄え海に流れつき、地域の生活を支え森を潤し魚貝類を育む大きな恩恵を与えていること。周辺の海ではアワビや岩ガキなどの貝類が獲れること。しかし近年はアワビの漁獲量が減少していること。どうすればアワビの漁獲量を回復させることができるのかを学びます。
・日程:2024年7月24日(水)25日(木)1泊2日
・開催場所:秋田県にかほ市
・参加人数:秋田県内小学5~6年生 20人
・協力団体:にかほ市、秋田県立大学、秋田県水産振興センター、秋田県栽培漁業協会、鳥海山・飛島ジオパークガイドの会
鳥海山の伏流水の始点と終点を探ろう
まず「あきたアワビ調査隊」が向かったのは、鳥海山の麓にある「元滝伏流水」です。鳥海山・飛島ジオパークガイドの会のガイドから、鳥海山が60万年前から噴火が始まりその後幾度となく噴火して山が形成されたことや、その溶岩の地層に雪解け水や雨水が溜まり15年ほどの年月をかけて湧き出ていることを学びました。伏流水を実際に触ると「冷たい」や「長い時間触っていられない」などの声が聞かれました。
約20分間歩きようやく「元滝伏流水」に到着。辺りは霧が立ち込め幻想的な世界が広がっていました。冷たい水温のおかげでその場の空気も冷たく、歩いて熱くなった体にはちょうど良い気温でした。その後伏流水を試飲できる場所に移動し実際に飲んでみました。参加児童からは「冷たくて美味しい」や「いつも飲んでいる水よりまろやか」などの声があがっていました。
午後からはその伏流水が湧き出ている海岸「釜磯の湧水」を見学しました。砂浜からポコポコと湧き出ている湧水を見つけた児童は宝物を見つけたかのように、手を入れてみたり足で触ったりしていました。思いのほか穴が深く、膝上や太ももまで足を取られている児童もいて「ギャーー」や「冷たーい」などの歓声があがっていました。その後、塩分濃度計とリトマス紙を使って湧水の水質調査を行いました。その結果、塩分濃度は0.05%でPHが7の中性で湧き出ている水は「海水」ではなく「淡水」と言うことが分かり、元滝伏流水から流れ出た伏流水が鳥海山近辺の海岸や海に流れついている事を理解しました。
アワビの栽培漁業の現場で学ぶ
鳥海山の伏流水の流れを確認した調査隊が次に向かったのは、「アワビ種苗生産施設」です。近年、海水温上昇や海の酸性化の影響で海藻が育ちにくい磯焼けの影響や、アワビの天敵のタコやウニなどの海洋生物が増加した影響でアワビの漁獲量が減っています。アワビ種苗生産施設ではアワビを卵からふ化させ20~30mmまで育ててから放流し、生存率が低いとされる稚貝の時期を人の手で育てる事業を行っています。まず児童が見学したのが、産まれたばかりのアワビの稚貝が入った水槽です。専用の容器に入っている小さな稚貝を見つけると「かわいい」や「ちっちゃーい」などの声が聞かれました。その後アワビが食べている餌やアワビのオスとメスの違い、アワビが自然の中で生きていく上で産まれてから20mmほどに成長するまでの期間が最も生存率が低く、その期間を人の手で育てて放流することで生存率を上げることを学んだ児童たちは、アワビが自然の中で生きていくことの難しさを実感していました。
自分たちに出来ることは?
イベント開催地の秋田県にかほ市では、初日の夕方から降り続いた雨の影響で大雨警報と土砂災害警報が発令されていたので、2日目は外での学習を中止し雨プログラムでの対応となりました。宿泊先の「ホテルエクセルキクスイ」は災害避難場所にも指定されているホテルで安全に2日目の学習が出来ました。
当初は平沢漁港鈴分港で水中ドローンを使用して海中の様子を観察したり岩場の岩盤清掃を予定していましたが、それぞれの活動動画を見て説明を聞きながらの学習に変更しました。
まずはアワビと岩ガキの生態について秋田県水産振興センターの佐藤さんから学びました。アワビは水深10m前後の岩場に生息し海藻を食べて育つこと、岩ガキは水深5m前後の岩場に生息し海中の植物プランクトンなどを食べることを学習しました。佐藤さんが撮影した水中動画では、秋田近海の岩場がフジツボや苔、泥などに覆われていてアワビが食べる海藻が育ちにくいこと、その岩盤には岩ガキが付きにくくなっていて生息環境が厳しくなっている状況にあることを学びました。県水産振興センターではその岩盤についているフジツボや苔などをヘラや水中掃除機などを使って綺麗にし、アワビや岩ガキが育つ環境を整えていることなどを学習しました。
水中ドローンが撮影した動画では、秋田近海に人工漁礁を設置し数か月後にはその漁礁に魚や貝類が住みついている様子を見て、豊かな生態系が育まれている事を確認しました。
その後児童は、2日間のイベントで学んだことを踏まえてこれから自分に何が出来るのか?海洋生物が住みよい海にしていく為には今後どうすることが必要なのかを1枚の絵にまとめました。
一人一人の絵には「伏流水を大切にする」や「海の生き物の気持ちを考えよう」「ごみを捨てない」「海を大事に」といったそれぞれの想いが込められた絵とメッセージが添えられ、2日間の学習の成果が表れていました。
参加した子ども・保護者からの声
イベント最初の自己紹介では緊張気味の児童たちで中には自己紹介ができない児童もいましたが、イベントを通して仲間と打ち解け少しづつ緊張や不安も無くなっていったように見えます。最後の発表では一人一人が自分の考えを発表し、人としても成長できた2日間だったと思います。
参加児童からは「新しい友達と鳥海山や海のことなど知れて良かった。部屋で遊んだのも楽しかった」「学生サポーターがとても優しく年も近いのでいろいろ聞けた。分からない時に丁寧に教えてもらった」「ご飯の時にアワビと岩ガキを食べれて食感や味が分かった」などの声が聞かれました。保護者からは「帰宅時、とにかく楽しかった!というのが第一声でした。一生の思い出になります。」「子どもが将来の職業選択について真剣に考える良いきっかけになりました」などの声をいただきました。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人海と日本プロジェクトin秋田県
URL:https://akita.uminohi.jp
活動内容:秋田県の海の今を伝えることで皆さんに興味を持ってもらい、海と共生するムーブメントを起こすことを目的に活動しています。また、海洋ごみ対策に向けた取り組みとして街のごみ拾いを中心に行い、多くのごみ拾い参加者を獲得。清掃活動やオリジナル企画などで、海ごみゼロのアクションを実施し、認知向上・意識向上を目指しています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/