秋田市文化創造館(旧・秋田県立美術館、秋田市千秋明徳町)が、モダン建築の国際的学術組織による「日本におけるモダン・ムーブメントの建築280選」に選ばれ、6月上旬、ウェイブサイトに公開された。
美術館ながら自然光を取り入れる工夫を施す特徴的な屋根を持つ建築(関連画像)
20世紀の建築の潮流の一つ「モダン・ムーブメント(近代運動)」の歴史的価値を承継し、文化的資産として保全することなどを目的に、1989(平成元)年に立ち上げられ、現在、70以上の国と地域で活動する国際的学術組織「DOCOMOMO」(本部=オランダ・デルフト)。同日本支部(東京都千代田区)は、日本建築学会(東京都港区)の協力を得るなどしながら、これまでに国内で264件を選定するが、2022年度、16件を新たに加えた。うち1件に選んだことを5月下旬、同施設に通知した。
1967(昭和42)年5月、秋田市の城址公園・千秋公園内の秋田県立美術館・平野政吉美術館として開館した同建築は、鉄筋コンクリート3階建て。建築面積約1677平方メートル、延べ床面積約2860平方メートルで、「日本宮殿流れ屋根式」と称される伝統的形式に西洋建築の特徴を加えた高さ約32メートル外観は、ランドマークとして市民に親しまれる。
秋田市の資産家で絵画収集家の平野政吉氏と交友のあった画家・藤田嗣治が、秋田で滞在制作した大壁画「秋田の行事」の展示を目的に設計された2・3階は、吹き抜けの無柱空間。美術館ながら、あえて自然光を取り入れる展示空間は、1930年代に藤田自身が提案したとされる。当初総工費2億300万円のうち、5,000万円を平野氏が寄付し、2,800万円が一般募金で寄せられた経緯や、1969(昭和44)年、昭和天皇・皇后が訪問し、藤田作品を鑑賞された歴史も。
「モダニズムと日本的なものが融合した秋田ならではの建築であること」「秋田と縁の深い藤田とのつながりが建築を通じて広く知られていること」「秋田市の文化芸術ゾーンの要として、地方都市におけるモダニズムの定着に重要な建築であること」などが評価され、選に加えられた。
新たな県立美術館(中通1)の開館に伴い、2013(平成25)年の閉館後に耐震補強工事などを施し、2021年から、秋田市がアートセンターとして運用する。
同施設を管理運営するNPO法人アーツセンターあきた(新屋大川町)事務局長の三富章恵さんは「選出されたことを光栄に思う。当建築を残した背景には、保存の声をあげた県民や市民の存在に加え、その思いをつないだ市関係者の努力がある。建物の保存に尽力した皆さんの思いを受け止めながら施設の運営に当たりたい」と話す。
営業時間は9時~21時。火曜休館(祝日の場合は翌日)。