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すきかちっ Vol.2/「秋田のBBQ」総合プロデューサー・伊藤智博さん #03

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記事提供:すきかちっ

東京と秋田の食材は違う!

※以下、伊藤=伊藤智博さん

Matirog「伊藤さんが秋田に戻ってこられた当初、『東京と秋田の野菜や肉は違う!』としょっちゅうおっしゃっていましたが、どのような違いか教えていただけますか?」

伊藤「バーベキュー(以下、BBQ)では野菜にオリーブオイルを塗って焼いていますが、そうするだけでおいしいんです。そして、東京でも新鮮なニンジンを選んでいましたが、秋田産のニンジンを東京にいた頃と同じように焼いているだけなのに、まるで違うんです。本当に甘いんですよ。感動しました。東京では、野菜に合わせられるようバーニャカウダソースをご用意していました。しかし秋田で同じようにソースをご用意しても、みなさん野菜の甘味で十分おいしく食べられるようで、ソースが余ることが多くあります。ソースがいらないほど野菜本来の甘みが強くて、おいしいんですよ」

Matirog「僕も伊藤さんのBBQでナスをいただきましたが、思わず『うまってぃー!』と歓声が出るほどでした。野菜にオリーブオイルを塗るのには、何か理由があるんですか?」

伊藤「オリーブオイルを塗ることで、野菜の表面に膜ができるので、水分が必要以上に出てしまうのを極力抑えながら、中までしっかり火を通すことができます。そして程よく水分が抜けると、甘みやうま味が中にギュっと詰まるので、切らずに丸ごと焼く方がおいしくいただけるわけです」

Matirog「秋田のおいしい採れたて野菜にオイルを塗って、丸ごと焼くことで野菜本来の甘みがさらに凝縮されるんですね。ほかにこれは東京のものとは違う!と感動した秋田の野菜はありますか?」

伊藤「トマトや、トウモロコシですね。朝採れた野菜が5時間後には食べられますからね。これが東京の場合、秋田で採れた野菜が消費者の手元に届くまで最短でも4日間はかかると言われています。そのため、東京で売っている野菜が『新鮮野菜』と謳(うた)っていても、鮮度はそれなりに落ちています。その時間はどうやっても短くできませんから」

Matirog「生産者と消費者とを結ぶ時間が短ければ短いほど、おいしい野菜が食べられるんですね」

伊藤「秋田市上北手にある『JA新あきた直売センター いぶきの里』では、産地直送で提供しているのでグッと短い輸送時間で採れたて野菜が手に入りますよ。ほかにも秋田市下北手にある『お宮の下直売所』では下北手の畑で採ったばかりの枝豆が房で届きます。BBQをしながらお肉などが焼けるまでの間に、ついさっき産直で購入した採れたての枝豆をゆでて、茎付きの枝豆を出すこともできる。最高の贅沢ですよね」

Matirog「BBQ総合プロデューサーであれば、ある程度舌が肥えている必要があると思いますが、実際のところはどうですか?」

伊藤「そうかもしれませんが、秋田県産の野菜のおいしさはどなたにでも分かるはずです。ただし、秋田にお住いの方は日常的においしい野菜を食べているので、分からないかもしれませんね」

Matirog「前回お話しいただいた秋田市で開催した『縁結BBQ(えんむすびーびーきゅー)』に、東京から参加された伊藤さんのファンの方がいましたよね。その方が『東京でこんなにおいしい野菜はない!』とおっしゃっていました。秋田県以外の人にはすぐに味の違いが分かってもらえるんですね。コーヒーのCMじゃないですけど、違いがわかる男でありたいですよね」

「当たり前」こそ「価値」

Matirog「当たり前なモノの価値に気がつくことは必要だと思います。秋田県外に住んでいる方の意見や、伊藤さんのように一度秋田を離れて戻った方の意見は貴重ですね」

伊藤「Matirogさんもそうだったように、一度、秋田から出てみるのはいいことだと思います。そして離れた人たちが戻ってくることができる、戻ってきたいと思える秋田を作りたいですね。秋田以外の生活に慣れてしまって、もう地元には戻りたくないと思っている人たちが多いように感じます。秋田県外へ出た多くの方が戻ってこないのは『どうせ戻っても理想の仕事に就けない』とか、『この程度の収入しか得られないから』といった理由からなんですよね。でも僕自身一度離れて戻ってきたからこそ、収入は減っても、得た『価値』が多く、幸福度も高いことに気が付きました。これから先、秋田から一度離れた人たちを呼び戻すには、今の秋田の子どもたちに『郷土愛』を感じてもらうことなのかなと思います。故郷の良さを学ぶことで、一度離れても『郷土愛』を持ち続けてもらう仕組みを作れたらいいですね」

Matirog「世界で最も幸福度が高い国はブータン王国と言われています。国民の収入は高くなくても、お金では得られない幸福を感じていると聞きます。日本は経済の安定成長期終焉後、1991年から始まったとされる『失われた20年』の間に、価値の基準や幸せの定義が大きく変わりました。かつては一問一答のように、答えを求める能力が重要視されていましたが、現在では問題そのものを見出すなど、気づく力が必要とされています。時代の流れの中で、幸福に対する価値観も変わったのでしょう。秋田を出たことがなくとも、秋田の良さに気がつける教育が必要ですね」

伊藤「東京ではできないことでも、秋田では出来る、宝物はたくさんあるということに気が付いてほしいです。東京では到着するまでに半日や1日かかる温泉地へも、ここでは30分で到着することができます。スキー場もそうですよね。特にアウトドア派の僕にとっては、秋田は天国ですし、その価値は秋田にしかありません。そして、なんと言っても食べ物がうまいですから!」

Matirog「秋田に住む人たちも、秋田が持つ『価値』に気が付くべきですよね。『当たり前』が『当たり前』にそこにあるということは、とても幸せなことですから」

秋田県の「関係人口」を増やしたい!

Matirog「『交流人口』は、観光客のような一時的に特定の地域に訪れる人のことを指しますが、『移住/定住人口』は名前の通り長いスパンで滞在する人のことですよね。その『交流人口』と『移住/定住人口』の間くらいのイメージなのが『関係人口』です。仕事の都合で短期間滞在したり、その土地に住んではいなくても、秋田県のプロモーション活動のためにその土地にゆかりのある人が活動したりするなど、間接的に特定の地域と関わっている人のことを『関係人口』といいます。例えば最近では、秋田県出身の女優・モデルの佐々木希さんなどは、秋田県のPR動画などに出演されていらっしゃいます。僕はこの『関係人口』と呼ばれる方たちをもっと秋田県で増やしていけたらいいなと思っています」

伊藤「ふるさと納税も『関係人口』のひとつですよね。秋田県産の食べ物などに関心を持ったことをきっかけに納税された方たちは秋田に住んでいなくても秋田に関わっていますからね。僕が東京に住んでいたころ、『○○県人会』のようなサークルが多くありましたが、そこでは、故郷に戻りたいという人が半分くらいいました。しかし、実際のところは現在の生活水準を変えてまでして戻るということにためらう方がほとんどです」

Matirog「伊藤さんはよく決意されましたね」

伊藤「帰りたいと思っていても、なかなか行動できない人たちの受け皿になりたいんですよね。まずは『関係人口』を増やす仕組みを作りたいと考えています」

Matirog「伊藤さんは秋田市の『地域おこし協力隊』ですが、秋田県内の市町村に着任している地域おこし協力隊は全部で30~40人ほどいらっしゃると聞きました。その方たちで集まることはあるんですか?」

伊藤「秋田県の地域おこし協力隊は大きく分けると北・中央・南のエリアに分かれています。僕がいる中央部では集まることもありますよ。その集まりでは県に対して提案するために『交流人口を増やそう』という話題が出ました。観光客が一つのスポットではなく中央地域全体を回れるように、八郎潟町のコダマ農場や、五城目町の酒蔵、男鹿エリアの見学などを2泊3日程度のコースに組み込めないか、などみんなで話し合いました。各市町村がそれぞれの予算を組んでいる中で、なかなか自分たちだけでの実現は困難ですが、県に対して直接提案することで現実となりそうです」

Matirog「地域おこし協力隊の方が、3年間の任期中、地域にうまく溶け込めなかったという理由から、任期終了後にその場所に定住しないという事例もあるようですね。それを解決するために、ひとつの市町村で3人ほどの募集をかけていると聞きました。複数人いると仲間意識も生まれますよね。伊藤さんの場合は故郷に戻ってきたので、溶け込めないということはないかもしれませんが、知らない土地で一人で活動することは勇気も必要です。一緒に地域を盛り上げる仲間がいることはとても重要なのだと思います」

地域おこし協力隊が直面する壁

Matirog「地域おこし協力隊、秋田中央部のメンバーでの集まりでは苦労話などもあがりますか?」

伊藤「秋田市のためになることを前提に話をするのですが、それぞれの市町村によって異なる事情を抱えているので、メンバーもやりたいことがスムーズにできないことがあります。例えば、秋田市と仙北市で、合同で何かやりたいと思ってもそれぞれの市町村での許可が必要となり、最終的に実現できなかったりすることもあります」

Matirog「地方創生大臣の石破茂さんが秋田に講演会でいらした時の記事にあった『オール秋田で行こう!』というフレーズが印象的でしたが、それは各都道府県の地域おこし協力隊でも、同じように自治体サイドの許可が下りずに実現できない企画があるからなんですね。手を組んで地域を盛り上げようと、アイデアを出しているのに、もったいないです」

伊藤「市町村によってできることできないことは補いつつ、アイデアを出し合って相乗効果で盛り上げていきたいのですが、せっかくアイデアがあってもそれを実現段階までもっていくことができないことがあるのはとても残念です」

Matirog「立場の違う組織や団体が互いの強みを出し合って、課題解決を目指す『コレクティブ・インパクト』のように、チームを作ったらうまくいくんじゃないでしょうか」

伊藤「やはりそれにもいろいろ許可が必要でしょうね(苦笑)」

Matirog「地方創生の話まで広がりましたが、課題は多そうですね。急いで答えを出す必要はありませんが、問題を正確にとらえられる力は大事だと思います」

危機感を抱くべき!

Matirog「今の秋田県が抱えている問題は何だと思いますか?」

伊藤「僕は、秋田県民の『危機感の欠落』が問題だと思います。数年前の報道で、30年後に秋田県がなくなるかもしれない、ということを耳にした時、秋田が大好きな僕は、秋田のために何ができるかを必死で考えました。いろいろな考えを積み上げて、たどり着いたのが、BBQを秋田で広げることでした。ところが、実際に秋田へ戻ってみると、頑張っている方はいますが、彼らの中に危機感があるようには、あまり感じられませんでした」

Matirog「このまま少子高齢化が進むと、秋田県は今後、指数関数的な人口減少は避けられないでしょう。そうなると、例えば、青森県、秋田県、岩手県が合併し北東北県となり、これも例えばですが盛岡市が北東北県の県庁所在地となり、県民の大半が盛岡市に住むようになって、秋田県にはほとんど誰も住まなくなるという可能性だってあるわけです」

伊藤「本当に危機的状況ですよね。秋田県は、農業県であるにもかかわらず、農業をやめると言っている人がこの1年で僕の周囲だけでも10人ほどいます。農業継承事業を県も進めていますが、後継者も見つからないままです。秋田に移住して農業をやりたい人はいるのかもしれませんが、肝心の秋田にいる農業従事者が辞めるからもういいと諦めているように感じます。何代も続けてきた田畑や家畜を安易に手放すことはとても残念です」

Matirog「危機感を持たせるには、自分たちの代だけで完結しているような思考を捨てなければいけませんね。未来の秋田に住む子どもたちに、今の状況のままで託せるのかを考えれば、自ずと危機感が生まれるのではないでしょうか」

伊藤「もうどうにもならないんだろうと思いこんでいる農業従事者が多いんですよね」

Matirog「危機感を持って、視点を未来へ向けることが秋田を変えるカギとなりそうです。

※Matirogさんよりお知らせ
4月23日、「ファイオンエンターテインメント」は新たに生まれ変わります。
今回の「すきかちっ」配信日4月23日は、僕Matirog(北嶋友暁)40歳の誕生日です。40歳という一つの節目を迎える今日、弊所ファイオンエンターテインメントは法人化し「ファイオン株式会社」として再出発いたします!人生初の代表取締役です!(笑)より複雑化する経済社会の中で「我々は今もっともエキサイティングな時代を生きているのだ」ということを自覚し、我々なりのやり方で社会問題に向き合っていきます。 まだまだ未熟ではありますが、先輩方の力を借り社会に貢献していくことをここに約束いたします!ファイオン株式会社のこれからにどうぞご期待ください。

ファイオン株式会社 北嶋友暁

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