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インタビュー2014-10-08

「持続可能なまちづくり」を目指して~武内伸文さん

「わらしべ貯金箱」「商店街スゴロク」「グリーンドリンクス」「ボクシンク」「アキタ・バール街」…ネーミングもキャッチーな地域活性化イベントが近年、秋田市内で増えている。仕掛け人は、社会活動に取り組む同市在住の武内伸文さん。秋田高校を卒業後、青山学院大学へ進学。外資系コンサルティング会社勤務、イギリスの大学院への留学を経て2005年に帰郷。現在、家業の印刷会社の経営に携わる傍ら、市民の目線から地域課題の解決へ向けた活動に取り組む武内さんに話を聞いた(以下、敬称略)。

■持続可能なまちづくりへ向け

-ユニークな取り組みが多いですね

武内伸文(たけうちのぶふみ)武内「そうですね。私が帰郷した当時の地元の印象は、街中に『遊び』の感覚が薄いのではないかというものでした。もちろん、それまでにも魅力的なイベントはありましたが、人は楽しそうな取り組みに集まるものです。そして、そのような活動をきっかけに地域に関心を寄せる人とつながっていければいいなとの思いで取り組んでいます」

-最初の取り組みは何でしたか?

武内「家庭内に眠る不用品の価値を使う人が決めて取引きし合う『わらしべ貯金箱』です。イギリスでは、どんな小さな町でも不用品の売買を通じて社会貢献につなげようとする住民の意識がありました。モノの価値を貨幣価値で測るのではなく、使う人に委ねる取り組みとして2007年に初めて開きました。当初は商業施設のホールなどを会場にイベント形式で開いていましたが、2012年からは市内に常設スペースを設けて運営しています。そこに寄せられた寄付金で自転車タクシー『ベロタクシー』を県内では初めて導入しました」

-武内さんがベロタクシーをこぐ姿を街中で見かけることがあります

ベロタクシー 武内「私自身もドライバーをしています。現在はイベント会場などを中心に活用していますが、街中でベロタクシーを走らせていると、子どもはもちろん、大人でも笑いながら手を振ってくれます。皆さんの笑顔を見るとやる気が出ます(笑)」

-取り組みには、前職や海外留学の経験も生かされているようですね

武内「そうですね。外資系コンサルティング会社で働いていましたが、『まちづくり』に関心があったので、その後退社して、イギリスの大学院に2年半ほど留学しました。研究対象は『持続可能なまちづくり』。イギリスのほか、欧州各国も訪問して、地域の特性を生かした活性法を研究しました。『公共交通に力を注いでいる町』『住民参加型の意思決定が機能している町』『自転車にやさしい町』『過疎地の再開発を成功させた町』など、まちにはそれぞれの顔があることを学びました」

-現地の住民との交流で感じたことは?

武内伸文(たけうちのぶふみ) 武内「イギリスでは地元のスポーツチームを応援したり、地域経済やまちづくりのことを熱く語り合ったり…地域を自分自身のこととして日常的に向き合っている市民の姿を目の当たりにしました。このような成熟した住民意識は、まちづくりを進める上でとても重要であると実感しました」

-ところで、なぜ帰郷したのですか?

武内「家業の印刷会社を両親と2人の兄が経営していたのですが、8年ほど前、家族が交通事故に巻き込まれてしまい…。当時、留学中だった私も急きょ家業に携わることになったためです」

-それは大変でしたね

武内「そうですね…。でも、前職や留学を通じて得た知識や経験を故郷の秋田で生かす機会をもらったと思っています」

-前向きですね

武内「私の取りえですから(笑)」

■「耳を使う」「足を使う」「後ろ向きの話をしない」

-そのほかの取り組みも教えてください

グリーンドリンクス 武内「竿燈(かんとう)まつりに合わせて行う『市民パレード』は、社会活動や市民活動などをアピールすることを目的に2009年から続けています。個人から団体まで今年は1200人以上が参列しましたが、沿道の観光客の皆さんと手を振り合いながら歩く様子は壮観でしたよ。あとは、地域のトピックを題材に市民がディベートする『ボクシンク』も不定期に開いています。地域の未来などを気軽に話し合う場として市内のバーなどを回りながら開く月例の飲み会『グリーンドリンクス』は9月で80回目を数えるまでになりました。社会活動に取り組む市民だけではなく、会社経営者や新聞記者、クリエーターなど職業や世代を超えた交流の場になっています」

-「グリーンドリンクス」の参加者には「お約束」があるそうですね

武内「社会のことをテーマにした酒席では、特定の相手に対して自分の考えばかり話してしまったり、批判的・否定的な話が多くなったりしがちなものです。そこで、相手の話をよく聞くように『耳を使うこと』、多くの皆さんと交流するため『足を使うこと』『後ろ向きの話はしないこと』を会の参加条件にしています」

-地元商店街の活性化にも取り組んでいますね

武内伸文(たけうちのぶふみ) 武内「商店街の皆さんと一緒に取り組んでいます。商店街を盤面に見立ててサイコロを振りながら商店を回る『商店街スゴロク』や、正月に開く『商店街対抗新春夢綱引き』などがあります。2年前からは、市内広域を舞台にした飲食店飲み歩きイベント『アキタ・バール街』を地元のNPO法人などと共同で開いていますが、今年は2000人以上の皆さんに参加いただきました。皆さんが街中を楽しそうに回る様子を見ることがうれしくて頑張っています」

■市民主役型社会の実現に向けて

-取り組みにおいて大事にしていることを教えてください

ボクシンク 武内「私の役割は、多くの皆さんが街に関わることができる場を演出することだと考えています。そのような場づくりをする上で意識していることは、誰もができる範囲で気軽に参加でき、参加したことによる実感が持てる取り組みであるようにということ。短期的ではなく、長期的に見て地域の未来を考える人々とつながっていく上では重要なポイントだと思っています」

-市民の活動としての限界を感じることはありませんか?

武内「社会の主役はあくまでも市民であるはずですが、主役意識はあまり感じられないのが現状ですね。市民主役型社会を作り上げるためには、市民はもちろん、行政にも意識の変革が必要だと考えています。市民はもっと主役を謳歌(おうか)しつつ、発言や行動に責任を持たなければなりませんし、行政はそれらを後押しする良き伴走者になっていくのが理想ですね」

-武内さんにとって「社会活動」とは?

武内「社会活動は地域の変革へ向けたもの。そして、その活動家は演出者だと思っています。裏方で段取りを手配することも必要ですし、表に出て率先垂範していくことも大切。社会のあるべき姿をさまざまなアプローチで情報発信し、実践、啓発をしていく存在だと思っています」

-ありがとうございました。

武内伸文(たけうちのぶふみ)

【インタビューを終えて】

武内さんが、「持続可能なまちづくり」への思いを込めて名付けたという社会活動グループ「SiNG(シング)」。コアメンバー数名のほか、事業ごとにさまざまな分野の協力者を得ながら、多彩なアプローチで地域活性化活動に取り組む。グループ名の由来となった「Sustainability for the Next Generations(次世代につながる、環境にやさしい、豊かな社会を目指して)」へ向けた今後の活動に注目したい。

SiNG(シング) ベロタクシー導入に向けたチャリティーイベント「わらしべ貯金箱」開設(秋田経済新聞) 秋田で「商店街スゴロク」-秋田商工会議所と市民団体がコラボ(秋田経済新聞) 「アキタ・バール街」1800人が飲み歩き楽しむ-行列のできる店も(秋田経済新聞) 秋田で「竿燈」に合わせた市民パレード、今年も開催へ(秋田経済新聞)

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