全国に700団体ほどある青年会議所の32番目の会議所として1952(昭和27)年4月に設立された「秋田青年会議所」(以下、JC)が今年、60周年を迎えた。節目の一1年を担う理事長の進藤史明さんに話を聞いた。
-60周年おめでとうございます
進藤「ありがとうございます。一年一年を積み重ねてきた結果の60年なので、今年だけが特別ということではありませんが、先輩の皆さんがこれまで培ってきたものを整理しながら、次世代に引き継いでいけるようにと考えています。今年は『Go further 60th~今、さらなる一歩を踏み出す時!希望に満ちあふれた未来への架け橋となろう』というスローガンを掲げています」
-JCについて教えてください
進藤「JCは、いわば社会人学校のような目的を持った団体です。修練・奉仕・友情を『三信条』として定めています。会員には会社経営者も多く、地域での奉仕活動などを通じて経営者としてのリーダーシップなどを学んだり、メンバー間の友情を深めたりしています。JCは会員にとって修練の場でもありますので、それぞれの委員はあえて苦手なことにチャレンジすることもあります。例えば、今年の広報委員長はIT関連が苦手な会員が担当しています。これまではPRがうまくなかったせいか…今でも商工会議所と間違われることがあるので(笑)、今年は広報にも力を入れていかなければと考えています。JCでは『ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない』という言葉を好んで使いますが、これは人の中に身を置いてもまれることが人の成長のために大切だと考えているからです」
-具体的にはどのような活動をしていますか?
進藤「JCは1~12月を事業年度として、環境・青少年育成・地域活性化運動などまちづくりのための事業を中心にそれぞれ委員会を設け、イベントや講演などの開催へ向けた会議を開いています。会議所というくらいで、会議が多く長いのが特徴です。JCとして初めての事業は秋田市内の美化運動でした。その後、世間に広く定着した『クリーンアップ』運動という言葉を最初に使ったのもJCだとされています」
-会員が減少傾向にあるそうですね
進藤「最盛期には200人を超えていた会員ですが、現在はちょうど100人です。基本的に会員の会費で運営するため、会員減少は現在の経済状況も理由にあるかと思います。あと、事業目的の幅が広いJCに対して、目的を特化したNPOなどのボランティア団体が増えたことも理由の一つかもしれません」
-JCにはいわゆる「体育会系」のイメージもありますね
進藤「もちろん年上だから威張るという意味の体育会系ではありませんが、JCに年功序列の文化があるためのイメージかもしれませんね。入会年や役職はあまり関係がなく、実年齢の年功序列です。そのため、若いうちに入会すると下働きが長くなりますが(笑)、長い間先輩にかわいがってもらえたり、自分より若い世代とも長く付き合うことができたりするので、得るものも多いですよ」
-誰でも入会できるのですか?
進藤「20~40歳までの人であれば、基本的にどなたでも歓迎します。全国では女性会員も1割ほどまで増えていますが、秋田では現在3人なので、女性にももっと参加してもらいたいですね。年会費が14万円ほど必要になりますが、会員として積極的に活動すればするほど一日当たりの単価は低くなります。私は月に20日ほど関わっているので得しています(笑)」
-理事長はどうやって決めますか?
進藤「副理事長などの経験がある人の中から立候補で決めます。話し合いを行うなどして、通常は選挙を行いません」
-進藤さんはJCには珍しい「文系」理事長だと聞きました
進藤「いえ、私も体育会系ですよ(笑)。文系ではないですね…。特に理事長になってからは、自分の自由な時間が無くなりましたが、それがつらいと思うことはありません。ただ、3歳の娘と4カ月の息子がいるのですが、一緒に風呂に入る時間を取ることができないのは残念です。だんだん家での立場もなくなってきたように感じることも…(笑)」
-人間関係やエピソードについて教えてください
進藤「JCには趣味のサークルもあります。野球やサッカーなどスポーツのほか、最近はマージャンが活発なようです。スポーツは全国大会も開いたりするので、西日本までバスで10時間以上もかけて遠征したりしています。あと、日頃の会議は19時~23時ごろに開くことが多いため、反省会と称して出掛ける飲み会も遅くなります。深夜から早朝まで飲むこともあります。かつては酒の飲み方もすごかったようですが、私のエピソードは…あまりないですね。会員やOBのエピソードについては控えます(笑)。飲み会は腹を割って話をすることができる場になっています。特に会社経営者でもある会員は、会社や自身の悩みごとを従業員に相談しづらいことも多いけれど、会員同士なら話しやすいこともある。そういう人間関係を通じて生涯の友人ができたりするようです」
-OBも含めて会員のネットワークが強みですね
進藤「そうですね。ただ、JCだけではできることも限られるので、数年前からは目的を同じくするまちづくり団体など外部団体との協力関係を広げるようにしています。JCのメンバーになってくださいというのではなく、広い世代の皆さんへのアプローチを通じた提携にも力を入れています。秋田をいいまちとして次世代に引き継いでいきたい思いは同じですからね」
-60周年記念事業などの予定は?
進藤「昨年、JR秋田駅前で秋田県内の発酵食品文化を伝えるイベントを開きました。おかげさまで県内外から4000人もの皆さんに来場いただきました。このイベントは地元NPOや社会活動団体と連携して開いたものです。今年も秋田の食文化を広く伝えることを目的に同様のイベントをグレードアップして行う予定です。まちづくりをする団体として、これからはますます皆さんに体験してもらえるような事業展開が重要になると思います。私たちの活動を見て、若い世代の皆さんに関わってみたいと関心を持ってもらえるような」
-公益社団法人化するそうですね
進藤「全国では、既に十数団体のJCが認可済みです。秋田でも今秋をめどに認可されるよう準備しているところです。今の秋田は、やはり元気がないように感じています。地域が悪いとして、秋田を離れてしまう人もいます。しかし、『自分で変えられる』と考える人を増やしていきたい。何か光明になるようなことを私たちが見いだすことで、次世代を担う青少年の希望につなげられる活動ができる団体でありたいと考えています」
-ありがとうございました。
【インタビューを終えて】
物静かな雰囲気を漂わせながらも、自らを「体育会系」と称する進藤理事長。「若い世代に愛郷心を持ってもらえるようなまちづくりをしたい」と語る姿からは、内に秘めた闘志のようなものが伝わってきた。外部団体との連携も強めるというJCのこれからの活動に注目したい。