「ハルビン餃子店・雲龍」(秋田市中通4、TEL 018-834-2346)が来店者に配る「雲龍餃子レシピ」を記載したリーフレットが、常連客の間で話題を集めている。
同店は、黒龍江省ハルビンで修業した料理人、故・彭永祥氏を師とする今野信治さんが12年前から経営する中国東北部料理店で、メーンメニューはギョーザ。今野さんは「ギョーザは本来、『水ギョーザ』で食べるもの。中国ではギョーザを焼くのは前日の『余りもの』。日本で戦後定着した『焼きギョーザ』は、日本生まれの日本料理と言っていい。そのような環境の中で、『焼きギョーザ』完成のために真剣に取り組んだ師匠は、中国のギョーザ師として最初で最後の人ではなかったか」と振り返る。
今野さんは「師匠は手抜きをまったく知らない人だったが、私も融通は利かない。手間がかかっても昔のやり方でやっている」と、具に使用する野菜類は「切り方にも意味がある」(同)ことからフードカッターを一切使わない。「ギョーザの味をにごす余計な汁を出さず、サラサラの紙吹雪のような白菜の具を作るため」(同)、8キログラムの白菜を2時間かけて切るという。
同店のギョーザの調理法を掲載したリーフレットは昨年秋、「本物のギョーザについて、お客さんとの共通認識がないと思った」ことや、「後を継いでくれる若者もいないが、このまま『雲龍餃子』が埋もれていくのも忍びない」との思いから配り始めたという。
リーフレットには、「中国料理の神髄は漢方」(同)との観点から、「香辛料の調合」「皮作り」「油の選択」「焼き方」まで、同店の調理法「全11工程」を、ギョーザの歴史を交えながら詳述している。
今野さんは「中国でもギョーザはファストフード化し、特に都市部では家庭で食べるものも冷凍食品が一般化するなど、ギョーザ文化は崩壊しつつある」とし、「プロ仕様のレシピを公開するのは暴挙かもしれないが、既成品であふれかえる今だからこそ、皆さんがギョーザを手作りする際の役に立てれば」と話している。