秋田公立美術大学(秋田市新屋大川町)の地域考プログラム「AKIBI複合芸術ピクニック 秋田/京都」の成果発表会が1月14日、秋田市文化創造館(千秋明徳町)で開かれた。
プログラムディレクターのジュリア・カセムさんから成果物の講評を受ける受講生
同大学大学院複合芸術科が、秋田市と京都府京丹後市を拠点に夏期と冬期に分けて展開する受講生公募型プログラム。秋田や京都・東京・山形など7都府県の受講生9人が、1月8日から秋田市内に滞在して取り組んだ。
5組に分かれた9人の受講生は、秋田市在住の生活文化財収集家・油谷滿夫(みちお)さんが集めた、主に昭和中期以前に使われた民具などの「道具」を素材に、油谷さんや専門家の講義を受けるなどしながら、道具の歴史や時代背景などをリサーチ。「マタギの装具」「西馬音内盆踊りで使ういぐさの笠」「馬用のカンジキ」などの道具から得た情報を基に、現代美術的な視点に編集などのデザイン的思考を加えることに重点を置いた演習の成果物として作品を制作した。
作品5点を公開展示し、受講生を含め30人以上が来場して開かれた成果発表会当日。受講生は、同プログラムのディレクターを務める京都工芸繊維大学(京都市)の特命教授ジュリア・カセムさんの講評や、同大学大学院の教授で建築家の岸健太さんから効果的なプレゼンテーションについてアドバイスを受けるなどしながら、作品を紹介した。
沖縄県在住の金工作家・菊地綾子さんら3人で取り組んだグループは、展示空間に編ひもを張り巡らした作品を展示。演習の素材に選んだ「ブナ製の鉢」を擬人化して創作した文章をプロジェクターを使い鉢に投影し、「これまで紡がれてきたことと未来を編ひもなどで表現した」(菊地さん)。
わら靴を素材に成果物を発表した岡山県在住の山崎隆正さんは「作り上げたものを人に伝えることの意味を意識して取り組んだ。展示に対する考え方などプログラムで得られた経験を、これからの活動に生かしたい」と話す。
プログラムを統括する同大学院教授でアーティストの岩井成昭さんは「短期間のうちに必ず答えを出さなければならない演習で成果を導き出し、これほどの展覧会に仕上げた受講生の集中力が素晴らしかった」と振り返る。