秋田公立美術大学(秋田市新屋大川町)が昨年から取り組む事業「AKIBI複合芸術プラクティス・旅する地域考」の報告会が3月3日、秋田駅前の複合施設で開かれ、聴講者を含む約40人が、取り組みを振り返りながら意見を交わした。
主に芸術分野における、表現者の視点を共有できる企画者や創造的な視点を生かせる運営者・実践者を育成することなどを目的に、同大学院複合芸術研究科が企画する事業。芸術の対象としての「地域」を考察しようと昨年8月と今年2月、それぞれ1~2週間かけて秋田市や五城目町などで「旅」がテーマの演習を展開した。
あえて、大学生や美術家などに受講者を限ることで、演習内容や受講者意識などの「内圧」を高めることを狙い、五城目町を拠点に合宿形式で行った2月の取り組みを中心に報告した。
講師や受講者らは、雪深い真冬の同町で行ったフィールドワークやワークショップ、講座を通じて得た気付きなどについて、事業の意義や作品の制作過程の紹介などを交えながら、意見交換を行った。
講師を務めたスペイン出身でベルギー在住の建築家、メルセ・ロドリゴ・ガルシアさんは「経験により視点が転換される。現場における経験を通じた鋭い観察が、受講者の作品につながっている」と評価した。
事業を総括する同大学大学院の岩井成昭教授は「『旅する側はよそ者で、旅人を受入れる側は私たち』との関係は変わることのないものなのかと自問しながら事業を進めた。自分を見つめながら他者の価値観や問いを知ることができる点で、アートと旅は似ている。アーティストと仲間が集まり、さまざまな旅の提案を通じて、訪れた場の生活そのものが輝き始めるマジックのようなことが起きつつあるように感じる」と振り返る。