特集

秋田・地域資源の生かし方/松岡叡美さん+AKITA45

  • 25

  •  

 首都圏の大企業に就職する学生が多い国際教養大学(秋田市雄和)の卒業生で、地域の活性へ向け、あえて地元企業で活躍する女性がいる。秋田市独自の伝統文化の復活と文化資源を生かした観光促進や、まちのにぎわいづくり活動などに取り組む株式会社「せん」(秋田市千秋公園)で企画営業を担当する松岡叡美(さとみ)さんだ。

 秋田経済新聞が、秋田市でまちづくり活動に取り組む市民有志のグループ「AKITA45」(大町2)と連携して開くオンライントークセッションのゲストに松岡さんを迎え、同グループメンバーで、社会起業家・秋田市議会議員の武内伸文さんと、地域資源の生かし方をテーマに対談した。
※この記事は、2021年1月に行った秋田経済新聞主催のオンライン対談の内容を基に、一部加筆して再構成したものです。

松岡叡美(まつおかさとみ)さん/株式会社せん企画営業担当
1993年、北秋田市出身。株式会社せん企画営業担当。大館鳳鳴高校卒業後、秋田市の国際教養大学(AIU)に進学。在学中、アメリカ・ニューメキシコ州に留学。在学中にインターンとして関わった同社に入社し、途絶えかけた秋田市独自の伝統文化の復活と文化資源を生かした観光促進やにぎわい創出活動などに取り組む。

武内伸文(たけうちのぶふみ)さん/社会起業家、秋田市議会議員
1972年、秋田市出身。青山学院大学法学部卒、英国カーディフ大学大学院「都市・地域計画学部」修士課程。「組織・人の変革」を専門に外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアなどを経て、2015年から秋田市議会議員。「次世代につながる地域づくり」をテーマに、広範な分野で社会活動に取り組む。

松岡 大学生時代に2回ほどインターンを経験していますが、最初のインターン先は東京の大企業でした。社風が自由で新しく、すごく面白かったんですけれど、満員電車に乗って、揺られて、四方八方から人に押されて、ハイヒールで何時間も歩いて…。そのような通勤環境は、私には合いませんでした。翌年、秋田県庁でインターンを経験しました。環境も良く、働きやすさを感じましたが、やはり東京の企業での仕事に楽しさを覚えました。この2つのインターン経験から職場を探していたところ、秋田市内で若い女性が起業したというニュース記事を目にしました。すぐに、その社長に連絡しました。会社の営業が始まった翌月にはインターンで関わっていました。それが今の職場です。

武内 私も同じころに松岡さんとお会いしていますね。私が運営している月例交流会「グリーンドリンクス」に参加いただきました。秋田市議会の議会見学会にもいらっしゃいましたね。

松岡 20歳ごろですね。私にとって新しいことの全てに関心がありました。議会見学には興味本位で。秋田市の政治家は何をしているんだろうなと。

武内 国際教養大学では1年間、海外留学するカリキュラムもありますが、今の仕事に役立っていますか?

松岡 私は、アメリカのニューメキシコ州の大学に留学しました。専攻はビジネスマネジメントでしたが、副専攻としてゴスペルを中心に歌の勉強もしました。もう「ザ・アメリカの女子大生」でしたね(笑)。州のバスケットボール大会の開会式で、国歌斉唱する人を決めるオーディションに応募したのですが、アメリカ国民でもない私が選ばれたのです。スタジアムにいる何千人という人々の前で、一人でアメリカの国歌をアカペラで歌ったことは1番の思い出です。学校外のさまざまな活動に積極的に参加した行動力やコミュニケーション力は、今でも生かせているように感じています。

武内 私自身も留学経験があるため、国際教養大学の学生からアドバイスを求められることがあります。皆さんに必ず伝えていることは「とにかく何でもいいから触っておいで」ということ。海外で体験したことは、必ず財産になるはずです。私の場合は、留学先の駅前で流線型の乗り物を見かけたんですね。これが自転車のタクシー「ベロタクシー」でした。秋田市に帰郷して「街に何か遊びの感覚を取り入れたいな」と考えたとき、この経験から地元に初めてベロタクシーを導入することができたんです。海外で得た体験が基になって、それが財産に変わっていくことは大いにあると思います。ところで、松岡さんは、いわば秋田の伝統芸能を復活させる事業に取り組まれているわけですが、苦労されていることも多いのでは。

松岡 舞妓や芸者は、一般的には特殊な職種かと思います。そのため、ネガティブなイメージが先行されることもあります。日本文化の舞妓は、いろいろな科目ごとのお師匠さんから、本当に厳しいお稽古を付けられます。私は、舞妓が努力し、技を極めていく姿を美しいと思います。ただ、伝統芸能は、子どものころに触れていないと、興味を持たれづらい分野なのだとも思います。そこで、小学校の先生が主催する「子ども和の作法教室」で、「あきた舞妓」が講師としてお手伝いをしているのです。お茶会や箸の持ち方、年賀状の書き方、百人一首など、毎回テーマが決まっているのですが、子どもも親御さんにも好評ですよ。また、地元の皆さまから多くの支援もいただいており、本当に恵まれていると思います。あきた舞妓の事業は、当初から少なくない支援をいただいていましたが、今ほどは多くありませんでした。そこで、より多くの支援をいただけるよう、後援会「秋田川反芸妓を応援する会」を作ったり、私たちが活動の拠点にしている千秋公園内の「あきた文化産業施設 松下」館内に社名を入れた提灯や看板を備えたりするなど、民間の会社に応援いただきやすい仕組みを取り入れています。皆でいつもアイデアを出し合って、応援してもらうための工夫しています。

武内 ただ支援してくださいというのではなく、支援もらいやすい環境をつくることが大切なんですね。そのためには、相手の立場を考えることが必要かと思います。観光面でも、秋田の魅力を発信する際には、魅力があるから来てくださいというだけではなく、もっと来てもらいやすいような仕掛けをする必要がありそうです。今回の対談テーマは、秋田の地域資源の生かし方ですが、「秋田美人」「あきた舞妓」などは地域資源の例です。ほかにも、「食」「日本酒」「教育」など多くの分野で、秋田は全国から注目されています。これらをビジネス、サービスに変えていく上で、もう一歩の仕掛けが必要になってきそうです。そこでは、当たり前のことを当たり前のこととして終えてしまうのではなく、気づきを得ることが大事。気づきを得るためには、外から見る視点が重要になってきます。海外から秋田市に来られた皆さんからは「街がきれいですね」と声を掛けられることが多いんです。このことを多くの人に体験してもうためのメニューを作って取り組むこともいいですね。

松岡 確かにきれいですよね。あまりにも身近すぎて、その魅力に気付かないことって本当にたくさんあるなぁと思います。秋田はきれいだし、おいしい空気のにおいがします。県外から帰ってくると、秋田駅や秋田空港で感じる空気には清々しさを感じます。

武内 空港のにおいは、いいですよね。秋田の空気を缶詰にして売ったらいいという話があるぐらい。こういう当たり前に感じてしまっていることを、私たちは見過ごしてしまいますね。千秋公園だって、秋田駅からこんなに近い魅力ある公園です。

松岡 海外では、公園に多くの観光客がいます。日本では観光施設のような建物で体験サービスを受けることが観光のイメージ。それもいいのですが、公園の散策も楽しんでもらいたいです。歩くだけでもリフレッシュできる魅力ある千秋公園ですが、まだまだ眠っている資源のように感じます。私も千秋公園内をいっぱい歩いたんですが、いまだに知らないところがあります。地図に載っていない入り口がいくつもあります。巨大迷路のようで、この階段を降りたらどこ行くんだろうなと怖いような(笑)。久保田城のあった千秋公園の歴史を調べてみると、防空壕があったり、蓮が咲いているお堀の底が平らになっていない部分が一か所だけあったりして、そこは走って渡れるようになっているのだとか。舞妓たちもこういう話は詳しいんですよ。

武内 秋田市の地域資源も違った角度から見ることで、まだまだ伸びしろがありそうです。京都などは歩いて回るだけで楽しく感じますが、私は秋田市の寺町にも似た魅力を感じています。あれだけ多くの寺院があると雰囲気もいいです。ライトアップしてみてはと、住職さんにお話ししたことがありますが、お寺ごとの灯籠を使おうなどと話が広がりましたよ。寺院が集まっているだけにしか見られていなかった地域も、お寺ごとの個性があります。この魅力を伝えるためには、ちょっとだけ前に踏み出すことも大事なことです。

松岡 わぁ、素敵ですね。首が三つある龍の像があったり、お花畑が綺麗な寺院もあったりする寺町は観光名所にもなりそうです。そのまま、秋田市の飲食街・川反(かわばた)までライトをつなげても良さそうですね。

武内 まちを盛り上げるための仕掛けとして、各所で相談しているところなんですよ。イギリス人が秋田に来たときに気に入られたものは、私にとっては意外なものでした。江戸時代の上級武士の佇まいをそのまま残した、一つ森公園にある「黒澤家住宅」と、奈良時代の国の役所・迎賓館として使われた最北端の砦「秋田城跡」です。私たちにとってはマイナーに感じがちなものですが、外の人の体験を通して魅力が伝わっていきそうですし、私たちもこれを大切にしていきたいです。

松岡 私の母校の学生も、秋田の魅力に気付かないまま卒業して、出て行ってしまう人が多いように感じています。私は、地元の皆さんとの触れ合いから秋田の魅力を知りました。そのような経験を若い皆さんにもしてもらえるような機会を増やしたいです。そして、若い人が何か新しいことに挑戦するとき、頑張れ、頑張れと応援する雰囲気も作っていきたいですね。

武内 松岡さん自身は実践していますが、学生の皆さんとの接点を増やしたり、外からの視点で見つけたりしてもらいたいですね。そんな皆さんのつながりが、秋田が持つ資源の魅力を発見につながり、地域のパワーに変わってくはずです。一緒に頑張りましょう。

――ありがとうございました。

「秋田舞妓」プロジェクト始動-市内在住の女性が地域活性へ向け

秋田経済新聞特集

秋田経済新聞文化センター

  • はてなブックマークに追加