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すきかちっ Vol.3/ウタトエスタジオ #02

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記事提供:すきかちっ

秋田県出身のシンガーソングライター渡部絢也さんと愛媛県出身のイラストレーターいせきあいさんによる制作ユニット「ウタトエスタジオ(Utatoe Studio)」。歌と絵を組み合わせたライブパフォーマンス、絵本やミュージックアニメ、テレビCMなど、様々なコンテンツを共同制作している。「秋田県×愛媛県」「シンガーソングライター×イラストレーター」という掛け算が導き出す答えとは。
※以下、渡部=渡部絢也さん、いせき=いせきあいさん

掛け算が価値を生む?

Matirog「渡部絢也さんは秋田市出身で、いせきあいさんは愛媛県松山市出身です。そんな、出身地の異なる2人が、ウタトエスタジオを共同経営されていますよね。みそ汁で例えると、北海道と九州のように遠い地域産のみそを混ぜると、より美味しい合わせみそができるそうです。みそ汁の例のように、秋田と愛媛という、お二人が生まれ育った地域の違いや共通点をうかがい、そこから芸術面で新たにどのようなものが生まれたのか?というところまで掘り下げていこうと思います。まず、あいさんは初めて秋田県に来られた時にどのような印象を受けましたか?」

いせき「2012年4月に秋田県に来たので、もう6年ほどたちます。来た当初は目にするもの全てにおいて衝撃を受けました。空港に降り立ってすぐに目に入った積雪防止のため縦向きになっている信号機や、雪が積もった時に路肩の目印となる道路脇にズラリと並んだ赤白の棒、針葉樹林の多さ…とにかく見るもの全てが新鮮でした」

Matirog「われわれが学生時代に地理の授業で習った『日本の北部は針葉樹林、南部は広葉樹林』まさにそのままですもんね。北海道の人が四国に行って、竹林があることに驚くのと同じですね(笑)。まずは自然に衝撃を受けたんですね。秋田県民の県民性はどう感じましたか?」

いせき「東京を中心に見てみると、秋田県と私の故郷の愛媛県は同じくらい離れています。そのせいか、秋田県も愛媛県と県民性が似ていて、ほんわかした穏やかな人が多い印象で、人付き合いの面で『秋田に来た!』という実感はあまりありませんでした。一時期、愛媛県の隣にある香川県で暮らしたことがありましたが、香川県民の方がむしろ県民性に違いがあるなと思いましたよ」

Matirog「近隣県だとライバル視してしまう、という事があるのかもしれませんね。余談ですが、ライバル(rival)の語源はリバー(river)だそうですよ。エジプト文明時代に大事な水源であるナイル川を取り合って争いが起こる一方で、水源を共有している仲間意識も生まれ、敵でありながら仲間であることから、『リバー』が『ライバル』の語源となったようです。愛媛県と香川県の県民性に大きく違いを感じたというあいさんの印象の背景には、こうした『ライバル視』が関係しているのかもしれませんね」

いせき「愛媛県と香川県は隣同士の県なので方言もほんの少し違うだけなんですが、言い方によってはきつく感じることが多かったですね。愛媛県と秋田県は方言も全く違うので、方言に興味がある私にとって、秋田弁は可愛いなぁという印象でした。6年たった今でも、もっと秋田弁が聞きたい!と思っています」

渡部「僕は愛媛県には2回しか行ったことがありませんが、秋田県出身の僕から見て、愛媛県と秋田県の県民性は全然違うなぁと感じますよ。四国を八十八カ所回るお遍路さんの文化があるからか、おもてなしの心が厚いなと感じましたね。お店の方の対応がとても丁寧で、とにかく温かく迎えてくれることに感動しました。マニュアル通りの言葉ではなく、一つ一つの言葉に心がこもっているんですよ。当たり前の『いらっしゃいませ』からして、ぬくもりを感じました」

Matirog「秋田県の人の中には、サービス業としてのおもてなしをきちんと学んでいないスタッフも多いですからね」

渡部「観光業が盛んな土地では、おもてなしが自然と身についているのかもしれませんね。他の都道府県に行ってみると、同じ日本でも、その土地によって県民性に違いがあることに気が付くので、刺激を受けますよ。もしかすると、秋田県の人はそういった経験が乏しい人が多いのかもしれません」

Matirog「それぞれのSNSにも書かれていましたが、絢也さんは愛媛県に行って『海に島がある』ことに、一方あいさんは秋田県に来て『海に島がない』ことに驚いたそうですね」

いせき「島の多い瀬戸内海を見て育ったので、海の向こうには島があって、そこに人の生活空間が存在していると思っていましたが、秋田県で日本海を見ると、ただただ果てしなくて、その先には違う国が広がっていることを想像すると冒険心がくすぐられます」

渡部「僕が愛媛県に行って感激したことは、海に島が見えることもそうでしたが、海の色も馴染みのある秋田県の深い色とは違い透明感のある水色で、それがとても美しかったことですね」

Matirog「あいさんは、故郷の愛媛県の海と秋田県の海の両方を知って、海のイメージのストックが増えたのではないでしょうか?」

いせき「それぞれの海の色や波の様子も違いましたので、自分の中の海の概念が変わりました。オリジナルソング『秋田HATA☆HATA☆ROCK&SAMBA!!』で、ハタハタが力強く海に向かっていく様子を伝えるために描いた海は、私がよく知る穏やかな瀬戸内海ではなく、ザブーンと荒い、秋田県から見る日本海でしたね」

渡部「海の違いもそうですが、温暖な愛媛県では海辺にソテツが生えていますしね」

Matirog「ソテツですか!南国の道路に生えているヤシの木みたいなやつですよね。秋田県でソテツは生えないですよね(笑)。秋田県に来ることを決めた時、相当な覚悟をしたんじゃないですか?」

いせき「そうですね、かなり覚悟しましたね」

Matirog「どういった経緯があって秋田に来ることを決めたんですか?」

いせき「そもそもは2009年からフリーランスとして愛媛県で活動し始め、2010年にインターネットラジオをきっかけに渡部と出会い、彼のCDジャケットのデザインを手掛けたことが始まりでした。そしてその後、『ちんあなごのうた』(2010年)や『秋田HATA☆HATA☆ROCK&SAMBA!!』(2011年)が完成しました。そして2012年に秋田に来て、最初の半年は『うぶすな』というコンテンツ開発などをしている会社で働き、その後フリーランスのイラストレーターになって、現在にいたります。愛媛県を離れるとき、弟には『どうして東京じゃなくて秋田なの?』と聞かれましたが、渡部と一緒に制作した作品を見て、良いと言ってくれる方や新たな提案をしてくれる方が秋田県にはたくさんいたので、ここでなら自分の夢が叶えられるかもしれないと思って秋田に来ました。当初は3年間だけ秋田で挑戦しようと決めていたのですが、そのまま秋田に残りました。愛媛県にいた頃とは違ういろいろな発見があって、私にとって秋田県はとても魅力的です。ところが、秋田県の知人と話していても、『秋田にはなにもないからねぇ』という方が多く、とても残念な気持ちになります。私自身、故郷の愛媛県が大好きで育ってきたので、秋田県の人にも、自分たちの身近にあるものを好きになってくれたらなと思います」

Matirog「秋田県出身のシンガーソングライターの絢也さんが、イラストレーターのあいさんと組むことになった経緯をお話しいただけますか?」

渡部「彼女が3年という期限を決めて秋田県にいたころ、『ちんあなごのうた』のiOSアプリの制作をしたり、『アクアワールド茨城県大洗水族館』で共にライブを行ったりしていました。そして彼女が3年の節目を迎えたときに、シンガー・ソングライターとして僕一人で新たなチャレンジをすることも考えましたが、2人で一緒にやっていった方が、この先の活動のイメージがしやすく、いろいろなことが実現できる自信もあり、『よし!2人で一緒にやろう!』と『ウタトエスタジオ』を立ち上げました」

Matirog「『秋田県×愛媛県』『シンガー・ソングライター×イラストレーター』という掛け算が、無限の可能性を導き出したんですね」

必要とされる場所に飛び込んでいく

Matirog「『ウタトエスタジオ』が発足した日はいつですか?」 いせき「2015年4月1日です」

Matirog「『ウタトエスタジオ』の活動内容は結成当時から決めていたんですか?スタジオの紹介文には『歌と絵を組み合わせた表現活動を行い、絵本やアニメの他、遊び歌、テレビCMなど、ジャンルを超えた作品を共同制作。また、全国の水族館や幼稚園、保育園でパフォーマンス、歌と絵のライブを行うなど、ファミリーで一緒に楽しめる作品を届けている』とありますが?」

いせき「そうですね。渡部は音楽制作と個人のライブ、私はイラストのデザイン、そしてユニットとしてのライブ活動、この3本で収入を得ようと2人で決めてスタートしました」

渡部「初めはユニットとしてのライブ活動として、ファミリー向けの『歌と絵のライブ』を開催しようと考えました。サンプルCDやチラシを幼稚園や保育園に配布したりしましたね」

Matirog「自分たちのやりたいことだけではなく、社会の中でどのようなニーズがあるかもビジネスの上で着目すべき点ですが、どのようにリサーチされたのでしょう」

渡部「アクアワールドで行ったライブで、ファミリー層にとても喜んで頂けました。秋田でもファミリー層に喜んでいただきたいと考えた結果、今の形になりましたね」

Matirog「現在では歌のお兄さん、絵のお姉さんとして秋田県内の保育園などで『歌と絵のライブ』を開催されていますが、ファンの方も増えたのではないでしょうか?」

いせき「そうだと嬉しいですね。2018年2月にはクラウドファンディングサイト『FAN AKITA』でご支援いただいた『歌と絵のライブツアー』を無事に終えることができました。秋田県内9カ所10公演を終え、今まで開催できなかった市町村でライブをすることができ、わたしたちのパフォーマンスをよりたくさんの人に届けることができたと感じています。その中で『またライブに来たい』『また絵を描きたい』と思ってくれる子どもたちがいてくれたらとても嬉しく思いますね」

次回~渡部絢也さん&いせきあいさんの「あなたの『好き』を価値に変えるヒントvol.3-#3」は、5月28日掲載予定です。お楽しみに!

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