特集

すきかちっ Vol.2/「秋田のBBQ」総合プロデューサー・伊藤智博さん #02

  •  

1 2 3 4

記事提供:すきかちっ

「すきかちっ」のイメージは伊藤さん

※以下、伊藤=伊藤智博さん

Matirog「実は、今回僕が新たな試みとしてウェブマガジン『すきかちっ』を始めた理由は、ほかでもない伊藤さんとの出会いがあったからなんです。このウェブマガジンのコンセプトは『あなたの好きを価値に変えるヒント』です。好きなことを仕事にして、収入を得て生活を成り立たせるところまでもっていける人は、一体どのような人物なんだろうかとイメージしたときに、伊藤さんの生きざまがピッタリだったんですよ。僕が出会ったころの伊藤さんは、秋田県へ戻って来てまだ数カ月だったのにも関わらず、秋田のバーベキュー(以下、BBQ)における総合プロデューサーというブランドを既に築いているように、僕には感じられました。かつ『この人は間違いなく今後、秋田県で有名になるぞ』とも確信しました。今回のオファーを二つ返事でご快諾いただいたときは、本当にうれしかったですよ!」

伊藤「ブランド、なんて言って頂いて光栄なのですが、実際のところBBQだけだと収入面を見てもまだまだです。冬場(12~1月)は、1、2回しかBBQを開催できていません。そうなる予測はしていたので、冬場は売り込みの期間として、スキー場や温泉地を回っていました。その甲斐もあって来シーズンは、冬季のBBQも期待できそうです。現状は『地域おこし協力隊』の収入なしでは厳しい状況ですね(苦笑)」

Matirog「新たに何かを始めようとする起業家にとって、スタートアップの時期はどうしても初期費用がかかります。野菜の成長に例えると、種をまき、芽が出て、花が咲き、実を付け、やっと収穫の時期、すなわち収入を得られる時期を迎えます。このようにさまざまな過程があり、それぞれの段階でお金も時間もかかります。実際に起業してから収入を得られるようになるには、3年ほどかかると言われていますよね。その3年をどう食いつなぐかが大変ですが、この3年間しっかりと土壌を育て、水を与え、手を掛けていけば、その後大量の花が咲き、豊作となり、新たにまく種も充分に得ることができるはずだと思っています」

伊藤「現在全国で展開している『日本バーベキュー協会』の力は大きいですね。ここ10年で1万3000人くらいの会員数になったと聞いています。僕は、その秋田県版を主催したいと思っています。実際5年ほど前から、秋田県内の数カ所でBBQイベントを開催していたこともあり、BBQ好きの方との出会いも多くありました。今年も初めての場所でBBQを開催する予定なので、新たなBBQインストラクターの資格取得者とつながっていくことで少しずつ活動の幅を広げていけそうです」

Matirog「種まきが始まっているんですね」

「日本バーベキュー協会」が伝えるアメリカと日本のBBQの違い

Matirog「日本バーベキュー協会はいつごろからある団体なんですか?」

伊藤「2006年設立で、12年ほど前からある協会です。BBQはもともとはアメリカの文化です。アメリカはBBQが盛んですよね」

Matirog「その日本のBBQ文化の火つけ役はどなたなんですか?」

伊藤「日本バーベキュー協会の会長である下城民夫(しもじょうたみお)さんですね」

Matirog「あ!テレビで見たことあります!!テンガロンハットをかぶって星条旗柄のシャツを着ている方ですよね。BBQと言えばこの方!という印象があります」

伊藤「彼が日本にBBQ文化を浸透させたんですよ」

Matirog「BBQ文化を浸透させるために、下城さんはどのような活動をされたんですか?」

伊藤「焼肉とBBQの違いを明確にすることから始め、BBQの楽しさやカッコよさ、かつスマートで簡単にできることをアピールポイントに、アメリカで親しまれているBBQは、ここ日本でも楽しめるということを伝えてきました」

Matirog「僕が小学生や中学生のころのBBQと言えば、切ったお肉やエビが鉄串に刺さっていて、それらをとにかく焼くというイメージでしたが、それは違うということですか?」

伊藤「例えば豚肉とパプリカを刺した串は彩りも良くて見た目は美しいのですが、焼き上がり時間の違う食材を合わせているので、実際にはおいしく焼けません。豚肉は肉芯が63度になるまでは食べてはいけませんが、もし豚肉に火が通るまで待っていたら、パプリカはカピカピに乾燥してしまいます。よくテレビとかに登場する、見た目が美しい串焼きは、おそらく撮影用なのでしょう。味はおいしくないはずですよ(笑)。それでも彩りを気にされるならば、牛肉とズッキーニは焼き上がり時間が同じですので、その組み合わせがおすすめです。食材の特徴も分かった上で串を用意しなければ、おいしいBBQにはなりませんよ。もともとアメリカでは異なる食材を合わせた串を焼くBBQ文化はありません」

Matirog「初めて知りました!」

BBQインストラクターのスマートな火おこし

Matirog「伊藤さんは日本バーベキュー協会公認上級インストラクターですよね。初級、中級、上級と3つの階級があるそうですが、伊藤さんと同じ上級インストラクターは秋田県に何人いますか?」

伊藤「秋田県には3人います。全国では100人ほどではないでしょうか。そして日本バーベキュー協会のトップが先ほどお話した下城さんという方です。もともと中級というクラスはありませんでしたが、上級合格者があまりにも少なかったため、2年ほど前に作られました」

Matirog「英検準1級、準2級みたいなものですね」

伊藤「資格取得の証としてもらえるバッチの色が面白いんですよ。上級がゴールド、初級がシルバーで、あとからできた中級が赤なんです」

Matirog「ブロンズってわけにはいかないですもんね(笑)!上級取得は難しいと聞きますが、特殊な技術が必要とされるんですか?」

伊藤「炭起こしから始め、6品作り、炭収め(火を消す作業)までを90分間で行います。そのほか、衛生管理、もてなし方、お客さまの前で安全に包丁を扱っているかなど、細かいことも判定基準となりますが、大切なことは安心安全をいかに追及しているか、スマートBBQができているかです。これらをすべてクリアすることが実技試験となります。あと、筆記試験も難しいですよ」

Matirog「スマートBBQ、いい言葉ですね」

伊藤「火おこしの際に、みなさんうちわでパタパタあおぎますよね。あれはあまりカッコいいとは言えません。あれをしているのは、日本と韓国くらいです」

Matirog「え?!そうなんですか?うちわであおがずにどのようにして火おこしをするんですか?」

伊藤「『チムニースターター』という道具があります。煙突状の形をした中に網が付いた火おこし器で、網の下に着火剤を置き、下から上に上昇する火や熱を利用して、縦に炭を配置すると簡単に火おこしができ、煙突内部の上昇気流によって燃え続けます」

Matirog「うちわでパタパタ風を送らなくてもいいんですね。これぞスマートBBQ!!」

伊藤「最初にチムニースターターで火おこしの準備をしておけば、炭に火がつくまでの30分の間にテーブルセッティングや前菜の仕込みまでできます。お肉をいざ焼こうとする頃合いには、炭も準備が整っていますからね」

Matirog「無駄がない!」

伊藤「海外のBBQシーンを映画で見たことがある方も多いと思いますが、うちわであおいでいませんよね。仕込みに関しても、スーパーで買って来た塊肉をそのまま使うのもいいですが、ジップロックを使って焼肉のタレに一晩漬けこむ程度のひと手間を加えるだけで、断然おいしくなります。スーパーで買ったお肉は、必ずプラスティックトレーがついていますが、前日にジップロックに移し替えることで、味もおいしくなるだけでなく、当日のゴミの量も減りますよ」

Matirog「環境にも優しい!そういう意味でもスマートですね」

伊藤「下準備は極力自宅でしていくことをお薦めします」

BBQインストラクター資格はモテるんです

Matirog「縁結BBQ(えんむすびーびーきゅー)のときにお手伝いに来ていた、初級の資格をお持ちの50代の男性が、『子どもたちにBBQを楽しんでもらうための知識が欲しくなり資格を取得した』とお話してくれました。BBQに関する知識を得ることは、参加者にどのような影響をもたらすのでしょうか?」

伊藤「この方のケースで言えば、まずは一般に時間がかかりがちな火おこしが短時間で出来るようになりますよね。そして食材が丸焦げになることもなく、スマートに物事が進むことで、子どもたちからかっこいいお父さん!という評価を得られます。もちろん奥さまからも(笑)。僕自身子どもが2人いるので、年に1度は子どもの友人家族を招いてBBQを開催することがありますが、知識があるというのは周囲からの信頼や、この人に任せておけば大丈夫というような安心感につながりますからね」

Matirog「伊藤さんがスマートにBBQを進めることで、その場にいるお父さんたちも影響されて資格を取得しようと思う人が出てくるんじゃないですか?」

伊藤「そうですね。参加した奥さま方からは『うちの夫は火も起こせないのに、伊藤さんはかっこいいわねぇ』とお褒めの言葉をいただくことがありますので、奥さまから勧められて初級資格を取得した人も何人かいらっしゃいますよ。やはり、資格を取得したら、BBQのもてなし方が全然違いますからね。絶対にモテますよ!」

Matirog「だとすると、上級の資格をお持ちの伊藤さんは…(笑)?」

遠慮は不要、ベストなタイミングで食すこと

Matirog「上級インストラクターの資格は防衛省(以前の勤務先)にお勤めになりながら取得されたんですか?」

伊藤「日本バーベキュー協会ができた2006年ごろ、僕はまだ協会とは出会っていませんでした。当時、埼玉県和光市に住んでいて、歩いて行けるところにBBQができる大泉公園がありました。それで、月に1度、仲間と屋外で飲もうと、始めは七輪でBBQをしていたんです。埼玉県でしたので真冬でもBBQができ、毎月そこでBBQをしていたらどんどん人が増えました。大泉BBQ部という名前のFacebookページを立ち上げたところ、さらに人が増えたのです。その後、協会の存在を知り、資格を取得しBBQの『いろは』を学ぶと、BBQの楽しみ方の幅もより広がりましたね。それを11年間、毎月続けていました」

Matirog「11年間毎月!ということは132回!?ちなみに1回の最高参加人数はどのくらいですか?」

伊藤「焼き場の数に限りがありますので、40人ほどでしょうか。大泉BBQ部員は500人ほどいたので、グリルの数さえ増やせればもっとたくさんの部員が参加できたんですが。長年の経験もあって、BBQメニューの考案も得意です。イタリアンやアジアン、ハワイアンなどのレシピも豊富にあります。当時は毎月料理のテーマを変えてBBQを開催していました」

Matirog「もともと料理はお好きだったんですか?」

伊藤「レシピなどを見て正しく計って作る料理はあまり得意ではありませんでしたが、屋外で作って食べることは大好きでしたね。お酒が飲める年齢になってからはますます楽しくて好きになりました。あとは、誰かをもてなすことも好きです。人に喜んでもらえると最高にうれしいです」

Matirog「伊藤さんのBBQに参加したときに思ったのは、ゲストの表情をよく見ているなぁということです。口に料理を運んだ瞬間『おいしい!』と言っているゲストの様子を見て、伊藤さんも笑顔になっていたのが印象に残っています」

伊藤「よく見てますね(笑)。逆にゲストの箸が進まなかったりすると、反省することも多々あります」

Matirog「埼玉県で開催していたときと、ここ秋田県で開催しているときのゲストの反応の違いはありますか?」

伊藤「如実に違いますね。関東ですとお皿に料理を出すと、みなさんすぐに食べてくれますが、秋田県では『どうぞ!』と言ってもなかなか手を付けてくれません。遠慮される方が多いですね。ベストなタイミングで料理を出していますので、もてなす側としては、もどかしい気持ちになることもあります。そんな時は『遠慮はいらないので、早く食べてください!』と言っちゃいますけどね」

Matirog「遠慮しがちな秋田県民ですが、伊藤さんの働きかけにより変化はありましたか?」

伊藤「はい。少なくとも自分と近い関係の人は、すぐ料理に手を付けてくれるようになりましたよ」

Matirog「BBQプロデューサー伊藤さんが出す絶妙なタイミングの料理に手を付けないのは、かえって失礼ですからね。僕の唯一の趣味はパスタ作りなんですが、パスタが完成したらしゃべらずにすぐに食べてほしいです(笑)。麺がアルデンテの状態の時が一番おいしいんですから」

伊藤「その気持ちよくわかります。こちらが食べてほしくても、やはり控えめな県民性が出てしまうのかもしれませんね」

Matirog「とはいえ、僕としてはパスタを出してから30秒以内に一口目を食べてほしいです。料理と恋は冷めないうちに、ですよ(笑)!」

1 2 3 4

すきかちっ(Phiomn Entertainment)