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元祖「メガネライター」~今絵うるはさん

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■元祖「メガネライター」

秋田経済新聞-今絵さんは元祖「メガネライター」とお聞きしています

今絵「元祖だなんて(笑)。10年ほど前、『プライベートアイズ』という眼鏡専門誌の創刊にかかわったことが『メガネライター』として活動する直接のきっかけになりました。同誌の立ち上げ時、わたしはウェブサイト担当だったのですが、いつの間にか編集スタッフになって…ライティングもやるようになりました。今も『メガネライター』として同誌にコラムを連載しています」

-珍しい肩書きですが他の「メガネライター」との交流はありますか?

今絵「最近は『メガネスタイリスト』もいますが、当時でも『メガネライター』はどこかにいるはずだと思っていて(笑)…各方面で探したのですが、どうしても巡り合うことができませんでした。今はほかにもいらっしゃるかと思いますが、東京唯一のメガネライターとして活躍されている伊藤美玲さん(台東区)とは、眼鏡展示会などを通じて面識もあります」

■秋田で出会った眼鏡の魅力

-ところで…今絵さんは眼鏡をかけていませんね?

今絵「わたしは視力がいいんですよ(笑)」

-(笑)今絵さんと眼鏡との付き合いのきっかけは?

今絵「わたしは青森県八戸出身ですが、秋田の短大に進学しました。卒業後に秋田市内の眼鏡専門店に就職したことが眼鏡との付き合いの始まりです。眼鏡は実際にかけないと使う人の気持ちがわからないので、店内ではかけるようにしていました。眼鏡をかけることの煩わしさや不自由さもありましたが、そこから気付きもありました。当時、商品の検品も担当していたのですが、その中にフランス製の『ラフォン(Lafont)』というブランドのフレームがありました。なんて美しいデザインだろうと感激したことを覚えています」

-ほかにお気に入りの製品はありますか?

秋田経済新聞今絵「わたしはコレクターではないので、そんなには買わないのですが、『ポルシェデザイン』のドイツ製サングラス。これは80年代のビンテージで東京の表参道で買いました。フレームの丁寧なつくりや独特の発色のレンズ、技術とデザインのバランスが素晴らしいと思いました。メガネライターとしてわたしのお守りにしています。あとは…赤いバラをモチーフにした『ボズ(BOZ)』や天女の羽衣みたいな質感が素晴らしい『サマ(SAMA)』なども気に入っています」

-どれもきれいですね

今絵「眼鏡をモノとして見ると、フレームとレンズだけでもさまざまなメーカーがありますが、さらにユーザーとショップ担当者との関係も大切。いろいろな要素の掛け算で完成するのが眼鏡の魅力です」

-眼鏡は単なるモノではないと

今絵「眼鏡店スタッフの仕事は美容師によく似ていると思っています。目と眼鏡の知識だけでなく、加工や測定、フィッティングなどの技術的なスキルも必要ですし、接客というコミュニケーション能力も求められます。さらに、眼鏡がアイウエアと呼ばれるようになり、ファッションアイテムとして認識されるようになったことから、ファッションセンスも求められるわけです」

-なるほど

秋田経済新聞今絵「最近は、手ごろな価格の製品も増えました。しかし、選択肢が増えた分、眼鏡の市場は混乱しているようにも見えます。デザインはもちろんですが、品質や技術的な意味合いも含めて『数万円と数千円の眼鏡がどう違うのか』といった情報が、ユーザーにあまり知られていないように思います。テクニカルな定義もショップごとに大きく異なっていて、例えば、専門スタッフが一生かけて腕を磨く『フィッティング』という眼鏡の完成のための重要な技術・工程についても、単にユーザーの耳の上に眼鏡を差し込む動作を『フィッティング』と呼ぶショップがあるのも現状です。眼鏡店を語るとき『半医半商』という言葉がよく用いられますが、眼鏡店はビジネスの枠組みの中に位置するだけでなく、眼鏡は医療補助器具としての役割も持っているということです。そのため、これからの眼鏡の市場には情報の透明性や明確な基準が必要だと考えていて、現在ある人に協力いただきながら、レンズを選ぶ目安になるものを制作中しています」

■秋田での活動、魅力は伝統工芸と自然

-最近、眼鏡周辺で注目していることはありますか?

秋田経済新聞今絵「そうですね…数年前、デパートの展示で『龍村美術織物』を見たことをきっかけに伝統的な『和』の技術に注目しています。特に秋田はものづくりが面白い。これまでに、『杢目銅(もくめがね)』や『川連塗り』など、世界に誇ることができる伝統工芸の取材もしました。『テオ(THEO)』というベルギーのアイウエアブランドがあるのですが、同ブランドのパトリック・フートさんは世界的なアイウエアデザイナーの一人です。取材中、フートさんに『杢目銅』のことをお話したところ、既に『杢目銅』をご存じでした。そういった魅力的な技術が秋田にはあるんですよね。ドイツやフランスなど、海外のブランドには『その国らしさ』があります。特に眼鏡と伝統工芸のミックスには注目していますが、日本の眼鏡を作る技術は世界的に見ても高いので、これから市場もますます成熟していくと信じています」

-ところで、今絵さんのお仕事で秋田を拠点にすることの不都合はありませんか?

今絵「今は東京の事務所に所属して活動しています。転居することを条件に東京の会社から正社員のお誘いを受けたこともありました。正直なところ迷ったこともありますが、秋田と東京を往復するのはわたしにとっては苦ではないし、何より秋田で子育てしたいという思いが強かったですね。現在、5歳と7カ月の子どもがいますが、子どもたちに肌で自然を感じさせてあげられる環境を選びました」

-これからの活動はどのような意識で取り組んでいきますか?

今絵「これまでも『すべてはアイウエアとアイウエアを愛する皆さまのために』ということを心掛けて仕事してきましたが、モノと人の掛け算から生まれる眼鏡の世界は無限です。アイウエアの魅力を多くの皆さんに伝えられるよう頑張りたいです」

-ありがとうございました。

秋田経済新聞

【あとがき】

秋田の伝統工芸技術に注目し、また2児の母としても秋田で活動することにこだわる今絵さん。今後の活躍に注目したい。

日本に2人?「眼鏡ライター」-元祖・今絵うるはさんは秋田で活躍中(秋田経済新聞) 台東区在住・都内唯一の「眼鏡ライター」、活動の幅広げる-会社員から転身(上野経済新聞) イマエウルハのうるはし眼鏡(今絵うるはさんのブログ) ボアエージェンシー

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