秋田公立美術大学(秋田市新屋大川町)のワークショッププログラム「AKIBI複合芸術ピクニック」夏期講座の最終回が9月25日にオンラインで行われ、受講生11人が中間成果を発表した。
同大学と同大学院複合芸術研究科が、2015(平成27)年から展開する受講生公募型の「地域考」プログラム。2019年からは、公募に応じた社会人や大学生ら10人前後の受講生を対象に、夏期と冬期に分けて合宿形式で開く。
コロナ禍のため、昨年に続きオンラインを中心に開かれた今年度の講座は、7都道県の社会人や大学生ら20~65歳までの男女11人が受講。「コミュニケーションを密に取ることができる合宿形式に近づけよう」と、オンライン会議システムや情報共有ツールなどのクラウドサービスを積極的に活用して行われた。
「秋田と沖縄」を題材に、両県を拠点に活動する映画監督や美術館学芸員、編集者、新聞記者など約10人のゲスト講師を招き、記録映像・自然環境・交易史・民俗学・アートシーン・地方ジャーナリズムなど、幅広い分野のレクチャーやディスカッションを1回4~7時間、7日間にわたって展開した。受講生は、レクチャーなどで得た知識に独自の調査や経験を加えるなどして、それぞれの視点から地域の考察を試みた。
中間成果発表会で、講座の課題「ピクニックのガイドブック作り」へ向けた自由なアイデアを披露した受講生は、同大学院教授で建築家の岸健太さんや映画監督で同准教授の石山友美さんらから、アイデアに必要な着眼や発想の仕方などについて手ほどきや助言を受けながら、2022年1月に開講予定の冬期講座へ向けて課題の仕上げに取り組む。
受講生の一人で都内在住のウェブディレクター・八木あゆみさんは「仕事柄、全国各地を訪れるが、特定の地域について考察することへの興味から受講した。社会人がオンライン講義を受けられる学びの場を設けてくれたことに感謝する」とし、「全国の皆さんと一緒に、これほどの時間をかけて『ピクニック』を突き詰めて解釈する作業は、哲学に通じる楽しい経験。これまでは当然だと思っていた言葉を、さまざまな視点から見つめ直して、自分なりの解釈を見つけていく思考は、この先に何かと向き合うときの姿勢にもつながりそう」と講座を振り返る。
同事業を統括する美術家で同大学院教授の岩井成昭さんは「地域を多角的に捉えるために多種多様なレクチャーを提供した。情報の海の中から新しい価値を探すための手引きや、地域を異化させるアイデアを盛り込むなど、受講生はユニークな『ピクニック』を作り上げた」と成果発表を評価。「冬期講座が始まるまでの期間は、受講生それぞれが、さらなる調査や実際のピクニックのシミュレーションを地元で行うなどして、ガイドブックの作成に取り組む。どのようなガイドブックができ上がるのか、今から楽しみでならない」と期待を寄せる。