秋田市文化創造館(秋田市千秋明徳町)で開催中の秋田公立美術大学(新屋大川町)の開学10周年記念展で、7月23日、グラフィティを題材にしたインスタレーション作品への「アンサー」が無断で展示されているのが見つかり、大学教員から驚きと喜びの声が上がっている。
美術批評と文化研究が専門の福住廉さんが手掛ける「グラフィティリサーチプロジェクト」
ペンキスプレーやフェルトペンなど、さまざまな画材を使い、アルファベットの文字列やイラストなどを描く「グラフィティ」。「ライター」と呼ばれる制作者が自身の主張の表現手段として展開するほか、他者のグラフィティへの返答「アンサー」を目的に描かれることもあるなど、独自の表現文化やコミュニケーション手法として広まる。街なかの構築物などに描かれるグラフィティが、「落書き」として景観を損ねたり、器物損壊で問題になったりすることがある一方、現代アートの分野では、近年、バンクシーのように高い評価を受ける作品もある。
「FSK」を名乗るライターから「アンサー」を受けたのは、街なかでグラフィティを撮影した写真で作るシール1000枚以上を館内壁面に貼り付けたインスタレーション作品「グラフィティリサーチプロジェクト」。
同大学大学院複合芸術研究科の基礎演習の一環として、学部生が市内で撮影したグラフィティの写真に、同大学院准教授で美術批評と文化研究が専門の福住廉さんが全国で撮影した写真を加えて展示したところ、キャンバスや箱状のオブジェクトなどに描かれた5点の「アンサー」が、展示スペース壁面に沿った床上に「勝手に」展示された。
福住さんは「(私たちが)ストリートのアートを勝手に美術展に持ち込んだことに対して、あえてキャンバスなどに描いたグラフィティ作品を勝手に展示されたもの。的確で最高のアンサー。一本取られた思い(笑)」とし、「言葉ではなく、アートを通じた地域との接点ができたこともうれしい。撤去せず、このまま展示したい」と話す。
同記念展の運営を統括する同大学院教授で美術家の岩井成昭さんは「キャンバスに描いた作品を置き去るという紳士的な対応にも受け取れるが、ゴッホの『ひまわり』をモチーフにしている点からは、大学のような美術的権威に対する反発と読み取ることもできる。ライターの真意は分からないが、アートを通じたコミュニケーションが生まれたことに興奮している」と喜びの声を上げる。
営業時間は12時~20時(土曜・日曜・祝日は10時から)。入場無料。8月7日まで。