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看護師辞めて、起業した。~ 山田綾子さん #03/すきかちっ Vol.6

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記事提供:すきかちっ

子育てをする全ての人たちを支える場所「子育てラボ hateao(はてあお)」。そこはまるで生まれたばかりの赤子を愛おしく抱きしめる母のような温かさを内包する場所だ。秋田の母として動き始めた山田綾子さんの成功の秘訣とは?

秋田の母になる

Matirog「女性の活躍が目立つ時代となりましたが、山田さんもその一人だと感じます。 ここ秋田県で山田さんが起業された時期はいつですか?」

山田「今年2月です。個人事業主になってまだ半年程度なので、青色申告ホヤホヤですね」

Matirog「税務署ではすんなり手続きが進みましたか? 」

山田「びっくりするくらいスムーズに手続きできました!」

Matirog「おー!それは良かったですね。企業するにあたっての覚悟はどのようなものでしたか?」

山田「1年間は勉強の年だと決めて、夫にお願いをしました」

Matirog「反応はいかがでしたか?」

山田「ダメだと言っても聞かないだろうと言われました。家がダメになるようなことがないようわきまえて動くのであれば、好きにやっていいと快諾してくれました。その言葉を受けて1年間は、いろいろなところに勉強に行きました。県外にも行きましたよ」

Matirog「勉強された内容について、お聞かせください」

山田「『hateao』を作り、秋田の母になろうという事業計画は当初から頭の中で完成していたので、それを実行するためにまず専門家の話を聞きに行きました」

Matirog「秋田の母ですか!」

山田「多胎児に限らず、一般家庭の現状を私も知りたいと思ったんです。 そこで、『秋田の母』になれば、さまざまな悩みを抱えるお母さんたちを支えてあげることができるのではと考えました。夢は大きく、です!」

Matirog「最強の母になりたいと思ったのですね。大きな夢を抱き、どちらで勉強されたのでしょう」

山田「東京の品川へ行き、多胎児の虐待率の勉強をしました」

Matirog「多胎児のいる家庭の場合、虐待の事例が多いということですか?」

山田「はい、お子さん1人の家庭と比べて、多胎児のいる家庭は虐待率が3倍と言われています。その3倍という数字が事実なのか、もしそれが事実であれば、多胎児のいる家庭にとってどのような支援が必要なのかを東京まで学びました」

Matirog「新しい情報を得られましたか?」

山田「全国から30組近くの多胎児サークルの代表が集まりました。東北で参加できたのは秋田県のみです。各地から勉強会に集まっているため、各地域の特徴も含めながら、現状の多胎児がいる家庭の虐待率についてディスカッションをしたところ、虐待率は上昇傾向であることが分かりました。そして、その家庭をサポートするためには、支援者がその家庭の中に入っていく必要があることを学んだのです」

山田「学んで気が付いたのですが、やはり地域性が影響します。支援者が多胎児家族の家に訪問することは、ある地域では受け入れられるかもしれませんが、秋田の県民性では受け入れられない場合が多いです。そのため、支援者がそれぞれの家を訪問し支援する方法は、秋田県にはマッチしないと感じました。そこで、秋田県の多胎児を育てる家庭にとって一番いいサポート方法で、かつ秋田県オリジナルのものを作るにはどうしたらいいかを考えた結果、支援者が訪問するスタイルではなく、多胎児のいる家庭を含む、子育てであらゆる悩みを抱えている人たちが訪問できる場所を作ろうと決めました。そこで、お母さんたちを支える場所『 hateao』を立ち上げることにしました」

育児のコンシェルジュ

Matirog「どのように子育てに悩むご家庭をサポートしていますか?」

山田「それぞれのご家庭の悩みの内容に応じて、『ひなっこクラブ』や行政を紹介し、相談者に私が対応する必要があれば、私自身がしっかり話を聞きます。どこに相談していいかわからず、子育てに悩みを抱える人たちが少しでも減るようにしています」

Matirog「育児全般に悩みを抱える人たちのためのハブであり、そしてコンシェルジュのような役目を果たしているんですね。その存在は、あらゆるご家庭にとって助かるはずです。 子育てをしていると、誰に聞いていいか分からない問題や、悩んでいることさえ気が付かず、どうしていいか分からない人もたくさんいますからね」

山田「抱える問題によって相談する場所は行政であったり、育児サークルだったりします。問題解決のためにご自身で相談する場所を判断するのは、なかなか難しいことなので、第一段階として私が窓口となっています」

Matirog「1年間で多くを学び、満を持して看護師を辞められたんですね。辞められるとき躊躇はしませんでしたか?」

山田「辞表を出す前に『今までもらっていた給料が辞表を出した瞬間からゼロになる』『金銭的に夫に負担をかけてしまう』など、いろいろ思うことはありました。 しかし、当時の私は看護師なのか、『ひなっこクラブ』の代表なのか、気のいい相談役なのか、方向性が分からなくなっていたので『秋田の母になる』と覚悟し、1本に絞って看護師を辞める決意をし、えい!と辞表を出しました」

Matirog「すんなり受理されましたか?」

山田「短時間でもいいから働いてほしいと言われましたが、中途半端な気持ちだと決心も鈍りますから、お断りしました。1年間一生懸命勉強し、資格を取っている私の姿を見て熱意を感じ取ってくれていたのか職場の人たちも最終的には受け入れてくれましたね」

Matirog「何年間勤めた職場だったのですか?」

山田「最後に勤めた場所は3年でしたが、トータルの看護師歴は14年です。 私自身、育児と仕事の両立がうまくできなかったため、子どもの成長に合わせて仕事を変えていました。家族が増えライフスタイルが変わったことで、仕事についていけなくなったこともありますし、何より家族を放って仕事にのめりこむ自分も嫌でした。そして、子どもが一番かわいい時期を一緒に過ごせず申し訳ない気持ちにもなりました。仕事と子ども、どちらが大切かを自問した時に、起業すれば両立できると思いました」

Matirog「感動しました! 僕が起業しようと思った理由とオーバーラップします。 僕は今年の4月に法人化しましたが、法人化を決断した理由のひとつに『子どもと一緒にいたいから』というのがあります。社長であれば、タイムスケジュールも自分で管理できますからね。子ども向けのイベントがあれば、スケジュールを調整して家族で行くこともできます。そこだけを捉えれば起業することは最高です!」

山田「起業したら、自由が利きますよね。子どもが小学校へあがると、より行事や付き合いも増えてきます。やはり親としては、子どもの行事にはできるだけ出てあげたいです」

Matirog「運動会では、若いパパに負けないくらい頑張りたいですしね(笑)」

山田「子どもが大人になって結婚する時期を迎えたら、ありがとうと言ってもらいたいですね」

Matirog「こんなエピソードがあります。新婦側から結婚式の司会を依頼されたときのエピソードです。新郎が双子のお兄さんの方だったんです。お色直しのあと再入場する際に、双子の弟さんが新婦と一緒に会場に出てきたんですね。新郎側の友人は、『あれ?なんか違う?』とざわついたのですが、新婦側はあまり反応がありませんでした。 もちろんすぐにネタばらしをしたのですが、双子ならではの演出ですよね。双子を持つ母親にしかできない体験ですよ」

山田「面白いですね!」

Matirog「今後、山田さんの喜びも二人分になりますね」

信頼関係の構築が成功の秘訣

Matirog「山田さんにしかできない、オンリーワンの部分はなんですか?」

山田「自分にしかできないことですよね。最近、ある人から『山田さんの頼みだと断れない』と言われたんですよ。私自身、とても困っている時でさえ『困っているから手伝ってほしい』の一言が言えないほど、お願い事がとても苦手です。頼まれた人も今忙しいかもしれないし、私の用事で、別の誰かの大切な時間を奪ってしまう…と思ってしまうんですよね」

Matirog「他の人への気遣いで、自分の首を絞めてしまうんですね」

山田「手伝ってくれるスタッフの中にシニアの方がいますが、その方が『山田さんのお願いは断れないから、できる範囲内でなんでも聞いてあげる』と言ってくれました。 それを聞いたときに、頼まなくても手を差し伸べてくれる人がいることが、私の強みなんだと思ったんです」

Matirog「山田さんがなかなか頼みごとをしないから『あの山田さんが頼みごとをしてる!』とスタッフも驚くんでしょうね」

山田「日頃から頼みごとをしないので、なにか助けてほしいときは、周囲が全力で手を差し伸べてくれますね」

Matirog「最近のビジネスにおいて、頼めることはメンバー内のできる人にやってもらったり、外注したり、といった傾向がありますが、山田さんのように人にお願いをしないほうがメリットがある…というケースもあるんですね」

山田「周囲にいろいろな方がいて、それぞれ得意分野を持っていますので、もっと人を頼った方がいいと言われることもありますが、なかなかお願いの仕方が分からず、誰かから声を掛けてもらうまで、黙って耐え忍ぶ傾向が私にはありますね。ある意味、作戦だと言われることもありますが(笑)」

Matirog「その手法はありですね! 一流の営業担当者は売り込まないと聞きます。売りたい商品があっても、商品の話はせずに日常の会話をして相手を喜ばせるなどして、相手から『買うよ』と言わせるようですよ。山田さんも、それに近いものを感じますね。無意識のうちに相手から寄ってくるのであれば、天性です」

山田「ビジネス書や新聞を読まないので、やはり天性なんでしょうか(笑)。よく読む本は『シャーロックホームズ』シリーズで、テレビでは『相棒』を見ています。誰かを観察して、何を欲しているのかを考えて、どうすべきかを判断することがやはり好きなんです」

Matirog「観察眼を生かして、ビジネスにつないでいるんですね。 山田さんの周囲の方も、いつも自分を見てくれていると感じるからこそ、山田さんが困っていると感じたら、すぐに手を差し伸べるのでしょう」

山田「私の事業は、ビジネスというよりも支援だと思って取り組んでいます。事業を支えてくれる企業や個人の方には、それぞれの得意分野があります。例えば、支援してくれるのが製麺屋さんであれば、麺を提供していただき、製粉会社さんであれば米粉を提供していただき、私が全面的にアピールします。みなさんが支援してくれるので、私も同じように支援することが、私にできることだと思っています。お金ではなく信頼関係を結ぶことで、本当に困ったときに自然に助けてもらえます」

Matirog「収支はトントンでいいという方向で活動されていますが、信頼関係の構築を大切にしていますから、最終的に事業は成功へと向かうはずです!」

★次回~山田綾子さんの「看護師辞めて、起業した #4」は9月17日配信予定です。お楽しみに!

すきかちっ(Phiomn)