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すきかちっ Vol.2/「秋田のBBQ」総合プロデューサー・伊藤智博さん #01

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BBQで秋田を変える

※以下、伊藤=伊藤智博さん

Matirog「伊藤さん、今日はよろにくお願いします!Facebookで伊藤さんと知り合ったころからの定番のごあいさつ『よろにく』で始めさせていただきます」

伊藤「はい!よろにくお願いします。1年間引っ張っていただいて恐縮です」

Matirog「『よろにく』と言うことで、伊藤さんと言えば『肉』ですよね。『肉=伊藤さん』の方程式が完成していますもんね。今回は秋田県でバーベキュー(以下、BBQ)を総合的にプロデュースしている伊藤さんの『あなたの好きを価値に変えるヒント』についてお話していただきましょう!」

伊藤「秋田県で『肉』と言えば、『伊藤』が思い浮かぶようになりたいです!」

伊藤智博(いとうともひろ)さんのプロフィール
「秋田のBBQ」総合プロデューサー、ケータリングサービス「BBQ Plus+」代表、JBBQA公認上級インストラクター、秋田なまはげBBQ協会会長、秋田市地域おこし協力隊

Matirog「伊藤さんを知るきっかけになったのは、小中学校の時の同級生のMJ君が『肉・野菜などの総合的な食の分野で革命を起こす人物が、まもなく秋田へ帰ってくるよ。とにかくすごい人がいるんだ!絶対につながるべき!』と僕に話してくれたことです。そして、Facebookで申請させていただいてアポを取り、伊藤さんご指定の場所でお会いするチャンスをいただきました。お会いしたお店はどこでしたっけ?」

伊藤「秋田市大町の焼き鳥屋『くしやもつや』ですね。ちょくちょく立ち寄るお店です」

Matirog「おいしいモツ、焼き鳥を食べ、ビールも1人15杯くらい飲みながら、秋田県産の野菜のおいしさ、コミュニケーションツールにもなり得るBBQのポテンシャルの高さなどの熱い思いを伊藤さんからうかがいました。そして秋田県の未来についても熱く語りあったことをよく覚えています。その後、僕がパーソナリティーを務める『ごくじょうラジオ』にも3回ほど出演してくださいましたね。以前お宅にも招いていただいて、ご自宅のガレージで素晴らしいBBQをふるまってくださいました。いや、おいしかったですよー!」

伊藤「とても感動してくださったこと、感謝します。焼き担当としては非常に光栄です」

Matirog「伊藤さんは焼いているとき、常に全体を見ていらっしゃいましたよね」

伊藤「(うれしそうに)そうですね、全体の流れを見るように心掛けています。それが好きなんです(笑)。ベストなタイミングで提供できたとき、たまらなくうれしいんですよ」

Matirog「10人ほどが参加したBBQでしたが、本当にどの料理もベストなタイミングで運ばれてきましてね、ピーマンってこんなにおいしいんだ!ピーマンって丸ごと焼いていいんだ!いや、むしろピーマンは丸ごと焼くからおいしいんだ!と、僕が思い描いていたBBQの概念がくつがえされたほどです。中までちゃんと火が通っていましたし。丸ごと焼いたお肉も絶品で、今までに体験したことのない、感動的なBBQでした。ありがとうございました」

学生時代と社会人時代を経て。やっぱり秋田が好きなんです!

Matirog「これから、伊藤さんのことを順を追っていろいろおうかがいしていきます。高校はどちらでしたか?」

伊藤「高校生まで秋田県で、秋田商業高校に通っていました」

Matirog「秋商ですか!部活動は何かされていましたか?」

伊藤「放送部でした」

Matirog「ほぇーーー!それは初めて聞きました!!ラジオでもお話ししていませんでしたよね?」

伊藤「放送部、部長でしたよ(笑)」

Matirog「えぇぇぇーーー!もともと興味があったんですか?」

伊藤「特に興味があったわけではないのですが…秋商は全員部活動に入らなければいけないという厳しい掟があったためです。坊主にしたくないしな…という理由もあって」

Matirog「秋商はサッカーで有名ですが、坊主頭ですね。運動部はたいてい坊主頭ですよね」

伊藤「当時バンドブームで、バンドをやりたいと思っていたんですが、そのためにはお金がかかるしバイトをする必要がありました。放課後はたいてい部活動に時間を取られますが、その時間をバイトに当てたかった僕は、昼間に放送を流すことが主な活動となる放送部であれば、放課後をバイトの時間として使えると思い、放送部に入部しました。 駅前のロッテリアで3年間バイトをしながら、ベースを買い、バンド活動をしていました」

Matirog「放送部とバイト、音楽を楽しんだ青春時代だったんですね。初めて知りました!高校生活を終えた後はどうされたんですか?」

伊藤「秋商在学時には、大学進学コースか公務員コースがあって、公務員コースを選びました。就職先として郵便局も決まっていましたが、条件の良かった防衛庁に決めました。なぜなら防衛庁は秋田県採用だったからです。でも、防衛庁に入ってからすぐ、宮城県仙台市へ行ってくれと言われました」

Matirog「え!秋田県に残りたかったのに杜の都、仙台へですか!?いいじゃないですか!仙台には歓楽街の国分町とかもありますし」

伊藤「当時は秋田を出たくないと思っていたんですけどね。国分町はよく行っていましたがあくまで視察です!(笑)」

Matirog「防衛庁は何年間勤務されたんですか?」

伊藤「26年間でした。最初は6年間仙台で過ごし、そのあと東京都や長野県などを転々と異動しました」

Matirog「約四半世紀異動を繰り返した後、昨年の4月から秋田県に戻られたんですね」

伊藤「戻るのにも5カ年計画を立てました。準備として色々資格も取得しました。将来活かせるかなと『日本BBQ協会』公認の上級インストラクターの資格も取得しました。初級はもともと持っていましたが、自己満足かもしれませんが上級を持っていれば、秋田県でも活かせるかもしれないという考えがあって」

Matirog「そこまで、秋田県に戻りたいという気持ちがあったんですね」

伊藤「ありましたね。頭の中でいろいろプランを練っていました。できることできないことを組み立てていたときに、2016年10月に『地域おこし協力隊』なるものを秋田市で募集していると耳にしました。最長3年間、秋田市の委嘱をいただきながら、やりたいことを試せるチャンスをもらえます。秋田県全体でBBQ文化を盛り上げたいという熱い思いを目一杯伝えた結果、ありがたいことに秋田市地域おこし協力隊に採用されました」

Matirog「もう一人北海道出身で、AIU(国際教養大学)のOBの方がいらっしゃいますよね」

伊藤「石井宏典さんですよね。彼はすごい方です」

Matirog「かなりの倍率だったのではないですか?」

伊藤「いや、そうでもなく(笑)。最終2次面接までは6人残ったと聞きました」

Matirog「そこから2人に絞られたわけですよね?秋田市の広報で拝見しましたが、秋田市を変えるぞ!!という力みなぎる熱い気持ちが伝わってきました」

伊藤「秋田を変えていきたいですね。僕自身まだ1年目なので成果は出ていないかもしれませんが、3年かけて変わるようにしていきたいです」

婚姻率UP↑のきっかけを作りたい

Matirog「続いては、この1年間で具体的にどのようなことをされてきたのかをお伝えいただきます。伊藤さんは現在、さまざまな活動をされていらっしゃいますが、まずは秋田県が抱える少子高齢化の問題、その問題の解決策の一つ、婚姻率UPのために具体的にどういった取り組みをなさっているかをうかがっていきたいと思います」

伊藤「婚姻率を上げるためには、まずは出会いです。開催している『縁結BBQ(えんむすびーびーきゅー)』についてお話します」

Matirog「縁結BBQ!キャッチーなネーミングですね。どのようなスタイルのBBQなのでしょう」

伊藤「基本的には男女同率で、秋田市外の人と交流しながら秋田市のことを知ってもらうためのBBQです。秋田県のおいしい食材をあじわいながら交流していただきます。参加者には秋田の魅力の再発見・発信をしてもらい、さらには秋田市に定住を検討してくれる人が増えたらいいなと思い始めました」

Matirog「かなりカップル誕生率が高いとうかがいましたが」

伊藤「お付き合いにまでいたったという方は1組ほどと聞いています。ですが、BBQ開催をきっかけに出会い、お友達として交流を続けているというパターンもあるようですので、そうした今後につながる出会いのきっかけを作れたことが僕の実績と言えますね」

Matirog「僕もその秋田市大町の 『あくらビール』の中庭でのBBQイベントに参加させていただきました。BBQで人々をもてなし、出会いの場を提供すること、それ自体にも興味がありました。そしてなにより、主催者の伊藤さんにとても魅力を感じていたからなんですよね。当日は音響機材を持ち込んで、音楽をかけたりMCをして盛り上げさせていただきました!」

伊藤「おかげさまで場も温まり、勢いがつきました」

Matirog「光栄です。当日は天候にも恵まれましたね。前菜から、メインのお肉、デザートまでご用意してくださいました。おいしそうに焼けたお肉の香りが中庭いっぱいに広がっていて、たまりませんでしたよ。BBQは最高のコミュニケーションツールだとおっしゃっていた意味が『体感』できました」

伊藤「僕のBBQでは、参加者同士コミュニケーションを取ってもらえるよう、なるべく準備段階から参加してもらうようにしています。野菜の下ごしらえなど、男女ペアになるように手伝ってもらいました。黙って作業される方はいませんので、そこには必ず会話が生まれますよね」

Matirog「実際に手を動かして共同作業をすることでコミュニケーションが生まれるということを、会場で見ていて実感しました」

キーワードは地産地消!冬でもBBQはできるんです

Matirog「縁結BBQ以外にも、先日、八郎潟町の『コダマ農園』でも開催されていましたよね」

伊藤「ガラス温室がコダマ農園にはあって、3月上旬の外気温が1度台だったのですが、ガラス温室内の温度計は30度近くを指していました。寒い時期のBBQではこの環境はとてもありがたく、半袖で過ごせますからね。この季節では野菜は葉物しか採れないため、そのぶん、さまざまな肉料理を提供しました」

Matirog「皆さんの反応はいかがでしたか?どのような方が参加されたのでしょう」

伊藤「地元のファミリーが中心で、なかには、温室で、昭和の懐かしいフォークミュージックを演奏された方もいらしゃいました」

Matirog「毎回誰かしらBGM担当がいらっしゃるんですね(笑)」

伊藤「楽しかったですよ。コダマ農園さんは畑を持っていますので、年間を通して、種を植え、育て、食すという一連のことをやっていこうと進めています。例えば、3月下旬にトウモロコシを植えたら、7月20日ごろに実となって食べられます」

Matirog「最近の言葉で言うと、ユーザー・エクスペリエンスですか?!『モノを売る』というよりも、『コトを売る』、つまり、種を植えて収穫するまでの時間を含めたストーリーを楽しむということですね!」

伊藤「トウモロコシの例でいうと、収穫の時期に合わせてBBQを開催し、育ったトウモロコシをその場でいただくことができます。BBQでいただく食材を種まきから始めることで、年間楽しめます」

Matirog「BBQそのものも、開始から終了までストーリーとして構成されていますが、その食材を育てることから関わることで、1年ほどの準備期間を経た上でのBBQとなるわけですね。自分が育てたものを焼いて食せるのは素晴らしいことですよ」

伊藤「秋田市から車で1時間ほどと少し遠いですが、そういう体験をしたいとの声も多方面からいただいてますので、ぜひやりたいと思っています」

Matirog「伊藤さんにはいろいろな肩書がありますが、その一つ『秋田のBBQ』総合プロデューサーというのが、Facebookなどでも一番上に書かれていますよね。秋田県内で他にその肩書きを名乗っている人は誰もいないので、いいところに目をつけていらっしゃるなぁと感心しました。オンリーワンですよね!そういえば、最近、タベルスキ・マイケルさんとコラボして、ソーセージを作られたそうですが、詳細を教えていただけますか?」

伊藤「これまでBBQで、ぐるぐるに巻いたフランクフルトを焼いていたんですが、あまりおいしいと思えるものに巡り合わず、真っ先にタベルスキ・マイケルさんのところへ行って作ってほしいと懇願しました」

Matirog「タベルスキ・マイケルさんはどのような方なのですか?」

伊藤「ポーランド出身の方で、秋田県大仙市出身の女性と母国で知り合い、結婚を機に2003年から奥さんの故郷に移住されました。ポーランドのおいしいソーセージの技術を持ち込んで、秋田県の素材を使用した秋田発のソーセージブランド『ポルミート』という会社を設立しています。秋田弁(大仙弁)もとても上手に話される方なんです」

Matirog「ポーランドは腸詰の文化・技術が発達している国なんですね!」

伊藤「単発でもいいのでおいしいソーセージを作ってほしいとお願いしたところ、彼が報道で僕のことを知っていてくださったこともあり、一緒に作りたいと思っていたとおっしゃってくださったんですよ。そう言われたとき、鳥肌が立ちました。それでトントン拍子で話が進み、昨年の6月には『ぐるぐるフランクフルト』の試作品が完成しました」

Matirog「僕もその『ぐるぐるフランクフルト』をいただきましたが、口に入れた瞬間ジューシーな肉汁が口の中いっぱいに広がったことを覚えています。スパイスや味付けを最小限に抑えているためか、余計な味がしないんですよね。その分、お肉本来の旨味がジュワっとあふれ、ソーセージってこんなにおいしいんだと感動しました」

伊藤「保存料もほとんど使っていません」

Matirog「ソーセージの半分は焼いて食べ、もう半分はスープにしましたが、出汁がたくさん出て本当においしかったです」

伊藤「シチューやカレー、おでんの具としても最高ですよ」

Matirog「今度ぜひ試して見たいと思います。そうそう、先日、伊藤さんのFacebookで拝見したよ。『マンガ肉手に入りました!明日焼きます』の投稿を。太い骨がお肉の両方にドーンと出ていて、両手で持って食べる、いわゆる昔のマンガに出てくるアレですよね。あのお肉は、いったいどこで手に入れたんですか?」

伊藤「(うれしそうに照れながら)秋田市にある岩波農場さんの『太平山ポーク』です」

Matirog「秋田県には、いくつかブランド豚があることは知っていますが、太平山ポークの存在は、正直知りませんでした。まだ秋田県内でそれほど認知されていませんよね?」

伊藤「はい。まだそれほど多くの人には知られていないと思います。でも、実際食べてみると、ものすごくおいしいんですよ。岩波農場の岩波重勝さんは、養豚に関する本を出しているくらい養豚業界では有名な方なんです。『養豚界の哲学者』とも呼ばれていて、30数年かけて今の味にたどり着いたそうです。これまで、豚に薬や栄養剤を飲ませたり、音楽を聞かせたりとさまざまなことを試みたようです。そうして最終的にたどり着いたのが、『何もせず豚にストレスを与えず、水素を少しだけ加える』という方法。何もしない。これが簡単なようで難しかったと。そのバランスが整ったときに初めて納得の味になったそうです。一昨年、初めてお会いした際、2時間ほどかけて、このお話を聞かせてくださいました。岩波さんの養豚にかける並々ならない情熱が伝わってきました」

Matirog「おもしろい!最終的には元素番号1番のH(水素)に収まったわけですね。それは、周期表の生みの親メンデレーエフも大喜びでしょうね(笑)。そして完成したのが今回のマンガ肉だったわけですね」

伊藤「マンガ肉は、生ハムと同じ、豚の太ももの部位を使い、それを成形して作りました。あまりに大き過ぎて、焼くのに8時間近くかかってしまいましたよ。まさかそんなに時間がかかると思っていなかったので、焼き上がりが待てず、ケバブの要領で表面をそいで提供しました。とてもおいしいと参加者のみなさんには言っていただけました」

Matirog「楽しそう!何よりも、『マンガ肉を再現する』という、少年の心をくすぐるような冒険にチャレンジしようとするスピリッツが素晴らしいですよね!」

伊藤「ありがとうございます。焼く時間がかかりすぎたことが今回の反省点なので、次回は太ももではなく、ふくらはぎで挑戦しようと思います(笑)」

Matirog「それはナイスアイデアですね!」

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すきかちっ(Phiomn Entertainment)