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新しいスタート~ジャズギタリスト・小沼ようすけさん

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ジャズ専門誌の読者投票で、数年にわたって渡辺香津美さんと人気を二分している秋田出身の人気ジャズギタリスト・小沼ようすけさんが2月11日、新作CD発売記念ツアー「Beautiful Day Release Tour 2008」の最終公演を秋田市で開催した。公演終了後、小沼さんにジャズと地元への思いを聞いた。(以下、敬称略)

秋田でのライブはステージを通して人がつながる機会

-名古屋からスタートしたツアー日程も終了しましたね。お疲れさまでした。

小沼「ありがとうございます。それも皆さんの協力があってのことで、感謝しています。今回のツアーは、スケジュールの面でもハプニングつづきだったんですよ。東京では雪のため空港が閉鎖したりね。何かひとつでもズレたら大変だったと思う。それが、偶然というプレゼントをもらった感じがするぐらい、ことごとく良い方向へ向かったツアーだった(笑)」

-新作CD『Beautiful Day』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)のレコーディングとツアーの経緯について教えてください。

小沼「レコーディングのきっかけは、ベーシストのリンカーン・ゴーインズとのジャムセッション。ソニー・ロリンズやジョージ・ベンソンらジャズ界の巨人との共演履歴を持つリンカーンは、僕にとっても憧れの存在だった。そこにスティーブ・フェローンという素晴らしいドラマーが加わった。スティーブは面白い人で楽屋でもムードメーカー。白人のリンカーン、黒人のスティーブ、そして僕は黄色人種というメンバーだけど、音楽に人種や国境は関係ないというメッセージも込めてるんですよ。最高のメンバーでレコーディングとライブツアーができて、本当に最高だった」

-東京、名古屋、大阪、福岡という4大都市に加え、秋田でも特別に開催されたツアーでしたが、最終公演となった地元での手ごたえはいかがでしたか?

小沼「秋田のライブハウスでも1年に1度くらいのペースで演奏してるけど、地元でのライブへの思いは深いよ。ジャズファンの皆さんはもちろん、友人や家族も聞きに来てくれるからね。自分の育ったところで演奏するのは楽しい。大都市でのライブはジャズファンが中心。でも、もっといろんな人が聞きに来てくれるのが地元でのライブ。そういう違いはあるけど、誰でも最初は『はじめまして』から始まるじゃないですか。そこから、少しずつ打ち解けて仲良くなっていく。秋田でのライブは、ステージを通して人の温かなつながりを伝えられる機会だと思うし、そこでギターを弾けることに幸せを感じている。秋田でもこれだけ多くの人が来てくれたことに感動しましたよ」

葉山での生活、最高の波に乗ったツアー

-昨年、「葉山」に引っ越されたそうですが、今回のツアーへの影響はありますか?

小沼「以前から海のそばで生活したくて、やっと念願がかなったんですよ。新作CDはそこでの生活で感じた『1日の時間』をアルバムに収めたもの。自然とか海との対話とか。生活から自然に出てくるのが今の僕の音楽なんですよ。都会で生活していた時は『音楽の化学反応』を楽しんでいたような感じだった。それも良かったけど、今はもうちょっと素直に出てくる『純度の高い音楽』のようなものだと思う」

-日ごろの曲づくりはどのようにしているのですか?

小沼「曲作りは無意識にするようにしてる。意識するとだめなんですよ。たとえば、海に行った後に作曲する時、ギターを手にして、なるべく無意識にポロンって弦をはじく。意識しないで出てきたものがいい曲になることが多い。その曲を後で聞いて、その時の情景が思い浮かぶようなのがいい曲かな」

-ライブでの演奏も同じですか?

小沼「うん。あまり考えないようにしている。自然に出るように。焦ったりするといい演奏はできないな」

-ステージで緊張することはありますか?

小沼「緊張しますよ、やっぱり(笑)。でも、今回のメンバーは、世界最高水準のミュージシャンなのに僕に演奏を任せてくれた。逆にいいミュージシャンほど、僕が任せたものも返ってくる。今回のレコーディングとツアーはメンバーに恵まれて、『最高の波』に乗った感じ」

-趣味でサーフィンをされるそうですね。

小沼「そう。サーフィンは一昨年からやってるんだけど、練習するほど『道具が体の一部』になっていくのが楽しい。何でもそうじゃない。ギターで言えば、初心者が『F』を押さえられない感覚。最初は頭で考えながらやっていたことが、身についてくると無意識に楽しめるようになるよね。それを克服していくプロセスが楽しい。だから、僕にとってのサーフィンとギターは同じなんですよ。ギターは僕の体の一部になっているから無意識に扱える。どう扱えばどう反応するかがわかる。でも、サーフボードは言うことを聞かない(笑)。サーフィンでも、最初は『でかい波』に驚くけど、それに乗れた時は快感ですよ。もし、20歳くらいでサーフィン始めてたら、今ごろこんなにギターやってなかったかも(笑)」

このライブツアーは「新しいスタート」

-小沼さんはブログも長くやってますね?

小沼「ブログはファンとコミュニケーションをとれることが楽しい。感想をもらうこともあるよ。本当に忙しい時は書けないこともあるけど、外では見せない自分の日常のことなんかを書いてる。僕の音楽との関わりもブログから見えるかもしれない。『今、こう思っている。ゆえにこういう演奏をしている』というような」

-秋田に帰省した時はどのような時間を過ごしていますか?

小沼「帰省中も仕事でゆっくりできないことも多いけど、高校時代にアルバイトしてたJR秋田駅前の洋食レストラン『やちよ』には必ず行く。『チーズカツ』と『しょうが焼き』が大好き。どちらもご飯との相性が最高なんですよ。でも、一度に両方は食べないよ(笑)。若いころに食べたものって、ずっと記憶に残るよね。当時の自分には高価なメニューだったけど、おいしくて忘れられないんですよ。そうそう、あと『トルコライス』ね!(笑)」

-最後に、ライブに来場した皆さんと小沼さんに憧れている若者へメッセージをお願いします。

小沼「憧れの一流ミュージシャンとホールでのライブを開催できたこと、それが秋田で実現できたことは長年の夢がかなった思い。秋田でのライブは多くの皆さんの協力で実現できたもので、来場してくれた皆さんには本当に感謝しています。音楽の原点はコミュニケーションだと思う。楽器の練習もコミュニケーションの手段。だから、楽器をやってる若い人には、演奏のテクニックに溺れないようにして欲しいな。音楽は人に与えつづけるもので、そういう感覚は、世界のいいミュージシャンだったら必ず身につけているよ。本当に愛されるミュージシャンは『与えることがすべて』だと思っているはずですよ。僕もこれまでの活動で得てきたものを『秋田に返したい』という思いもある。このライブは『新しいスタート』のように感じてる」

-お疲れのところ、ありがとうございました。

【あとがき】
日本を代表するジャズギタリストに成長した小沼ようすけさん。あくまで謙虚さを失わない小沼さんの語り口からは、ご自身が目指す音楽性への確信と郷里へのやさしい思いが伝わってきた。小沼さんのさらなる飛躍に今後も注目したい。

Yosuke Onuma Official Web Site
小沼ようすけオフィシャル・ブログ「nujazz-log」
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